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『詠子の恋』
【スポーツ 官能小説】

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『詠子の恋』-24

 やがて、吉川の力が少し抜けて、お互いの身体に距離を作った。
「よみ」
「こうクン」
 見つめあい、名を呼びあって、求める思いを確かめ合った二人は、それが当然の様に、唇を重ね合わせた。
「ん……」
 いつものような、軽いキスではない。吉川の興奮した息づかいが間近に感じられて、それがそのまま、口腔内に伝わってくる。
「ん、ふ……ん……ん……」
 時間も、とても長い。鼻で呼吸をしているとはいえ、それだけでは追いつかなくて、詠子はのぼせてしまいそうだった。
「んっ、んん……ん……ちゅ……」
 柔らかい感触が、口内に満ちた。吉川の舌が、入り込んできたのだ。
「んん……んぅ……んふっ……ん……」
 口腔内の空隙が更に狭まって、息苦しさに拍車をかける。もちろん、それを厭う気持ちは毛頭なく、朦朧とする脳内に酔いしれて、詠子は吉川とのキスに夢中になっていた。
「ん……は、ふぅ……」
 どれくらいの間、唇を重ね合わせていただろうか。吉川の顔が一旦離れていくと、それを名残惜しむようにして、唾液の糸が二人の間に橋を掛ける。
「すごい、キス……」
 詠子は、これまでのフレンチ・キスとは全く違う刺激を与えてきた、吉川とのディープな唇の重なりに、はやくも陶然として、その瞳が焦点を失っていた。
「あ……」
 肩に手を置かれ、そのまま優しく、組み伏せられた。吉川の真摯な眼差しを浴びながら、またしても唇が塞がれて、矢継ぎ早にやってくる刺激の波に、まるで櫓を失った舟のように、思考がぐるぐると渦を巻いた。
「んっ!」
 強く甘い刺激が、胸に走った。衣服の上からではあるが、吉川の手が乳房を下から揉みあげてきたのだ。
(ぜ、全然、違うんだ……)
 自分で触っていたときとは、比べようもない愉悦が、少しだけの愛撫だったというのに、体中を駆け巡っていた。

 もみ、もみ、もみ……

「ん、んふ、んっ、んっ……」
 優しく甘く、それでいてねっとりと、胸への愛撫が繰り広げられる。
(ひょっとして、経験、あるのかな……?)
 その手つきには、興奮の中にも労わりと気遣いが満ち溢れていて、初めて女に触れるという男子特有の、余裕のなさは感じられなかった。
 もっとも、初めて触れられる詠子に、その違いなどわかるはずもないが、確かに吉川は、女の身体の扱いを、どこか心得ている雰囲気を持っていた。
(でも、いい……いまは、わたしだけのものだから……)
 彼の過去に、どんな女性がいたかは関係がない。今この時点において、自分だけの存在であってくれるのであれば、それで詠子には充分だった。
「よみのおっぱい、おっきくて、やわらかい……」
「ふふ。こうクンの手、すごいエッチ。やっぱり、“むっつり君”だったんだね……」
「えぇ、なんだよ、それ……」
「“むっつりエッチ君”、わたしの体、もっと好きにしていいんだよ……」
「……うん」
 言われるまでもなく、吉川は、今度は両手を使って、詠子の乳房をまろやかに包みつつ、揉み込む指に力を込めていた。
「あ、ンッ……!」
 更に強い刺激が、詠子の喉を反らせた。大きいばかりで肩が凝る、自慰の時には多少気持ちよくなるとは言え、基本的には邪魔な存在としか思えなかった部位だったが、愛しい人に触られると、こんなにも激しい愉悦を生み出す場所になるとは、思いもしなかった。
(わたし、女の子でよかった……)
 初めて、そう思える詠子だった。


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