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『詠子の恋』
【スポーツ 官能小説】

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『詠子の恋』-14

「ん……ふ……う……」
 指を裂け目に押し当てて、ゆっくりと上下する。それに合わせて、蜜の滲みが指に絡まり、裂け目はたちまち、シャワーを浴びた後とは違う、透明なきらめきで満ち始めた。
(また、こんなこと……)
 自分の浅ましい姿を股座から見ながら、それでも詠子の指は止まらなかった。

 くち、くち、くち……

「はふ……ん……んぅ……」
 と、指の間で淫靡な水音を響かせながら、淡い喘ぎが詠子の口から零れる。単調な指の動きであるにも関わらず、吉川に見られている姿を想像していることもあってか、濡れ方がいつもより強い気がした。
 とろり、と、指の間から、糸を引いて蜜が零れる。鏡越しに見るその様が、我ながらとてもエロティックで、詠子は指の動きを更に強めていた。
(吉川クンの、せいなんだから……)
 最近、ほとんど毎日、こうやって自慰をしている。部屋に戻ってきて、彼のことを考えると、どうしても身体がうずいてしまい、指が伸びてそのまま弄り始めてしまうのだ。
「あ、ん……くっ……んくっ……」

 にちゅ、にちゅ、にちゅ……

「はぁ……んはぁ……ぁ……ん……」
 上下する指の間で、透明な淫蜜が泡立つように濃さを増している。何度も糸を引いて垂れ落ちて、詠子の興奮を煽るように、鏡の中で淫猥な様子を晒していた。
(いやらしい……わたし、こんな、いやらしいことしてるの……)
 吉川の目の前で、指を動かしている自分を想像している詠子。
(キミのこと、考えながら、エッチなことしてるの……)
 指の上下運動が、更に強くなる。今は部屋で自慰をしているので、尿意を高めてしまう“クリ×リス(陰核)”への愛撫は控えているが、それでも、吉川に見られながら自慰をしているという妄想が、詠子の性感を非常に敏いものにしていた。

 ぬちゅ、ぬちゅ、ぬちゅ……

「ンう……ん、んっ……んふっ……!」
 蜜が更に濃くなって、指の滑りをなめらかにする。指の動きに合わせて腰が淫らな動きを見せて、鏡の中で淫猥な姿を晒し続ける。
(吉川クン、わたし、ほんとは、こんなにいやらしい女の子なの……!)
 見られていることを想像する自慰だけに、上り詰めるのも非常に早かった。
「あ、クッ、あ、イ、イクッ……!」
 びくっ、と身体に震えが走った。いささか性急な自慰であったので、軽めのエクスタシーが、詠子の身体を小刻みに震わせた。
「はぁ、ふぅ、ふぅぅ……」
 達したときの硬直と弛緩を何度か繰り返して、詠子の身体から力が抜けた。
「……わたし、なにやってるんだろ」
 熱が冷めると、指を濡らしながら四つんばいになっている鏡越しの姿は、非常に滑稽なものに見えた。自慰の後の寂寞感も手伝って、詠子は少し、アンニュイな気分になってしまう。
 もう一度、シャワーを浴びて、濡らした陰部を綺麗にして、詠子は部屋着を身にまとう。そして、ベッドの上にその身を投げ出して、枕元に置いてある『素浪人・新五郎』(著・鳴澤丈一郎)を手にすると、しおりを挟んでいたページから、それを読み始めた。
(“お詠”のように、なれたらいいのに……)
 今読んでいるところは、物語のヒロインである“お詠”と、主人公の“吉川新五郎”が初めて男女の契りを交わしている部分である。
 この『素浪人・新五郎』で、一番好きなワンシーンであり、普段は蓮っ葉で勝気な“お詠”が、“新五郎”の愛撫に可愛い女の姿を曝け出して、秘めた思いが繋がった喜びに涙しながら、愛する男とともに上り詰めていくという、今の詠子の願望がそのまま形になっているかのような件(くだり)であった…。


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