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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第14話-14


「ピッチャー、代わったな」
「体格のいい投手だ。それに、かなり重い球を投げている」
 “猛虎リーグ選抜チーム”の投手も、近江大の浅井に交代していた。六文銭と仲里の見ている前で、骨太の逞しい体格から繰り出される直球は、非常に重そうな印象を抱かせるミットの音を鳴らしている。
「………」
 この回の先頭打者である六文銭が、打席に入る。ウェイティングサークルには、先の回から守備についている仲里が控えていた。
(本当は誠治が、このチームの4番に座るべき男なのだがな)
 二打席目を迎えている4番・六文銭の、声なき声である。
 “隼リーグの至宝”と呼ばれる、仁仙大学の強打者・安原誠治の名前が、この選抜チームに連なっていないことは、確かに首を傾げざるを得ない。もちろん、打診はあったものの、安原誠治はそれを辞退しており、代わりとして外野守備で堅実かつ献身的な動きを見せていた阿藤が選出されていた。
『体調の事もありますし、それに、前期の後半はほとんど戦力になれませんでしたからね…』
 前期の前半こそは、神がかりな打棒を発揮した誠治だったが、後半に入ると疲労からかスイングに鈍さが生じてしまい、打撃の調子をかなり落としてしまっていた。
『下半身がやはり、かなり弱っていたようです。鍛え直し、ですね』
 そう言っていたのを、六文銭は思い出していた。おそらく今頃は、体調と相談をしながら、下半身強化のメニューをこなしていることだろう。
(誠治の分も)
 成績に反映しない“交流戦”とはいえ、六文銭の身体に宿る気迫は、公式戦とは何ら変わりのないものであった。
「!」

 キィン!

「おおっ!」
 ツーストライク・ツーボールからの五球目に投じられた内角へのストレートを、六文銭は鋭いスイングで打ち放った。強烈なベクトルで叩かれたボールが、低い弾道で左中間を切り裂き、転々としていく。
「ナイスバッティング!」
 “隼リーグ選抜チーム”のベンチが沸く、4番・六文銭の二塁打であった。
 続いて、5番の仲里が打席に入る。櫻陽大学の、攻守の要というべきこの選手は、チームにとっての自分の役割というものを常に意識して行動している。
「アウト!」
 だから、サインを出されるまでもなく、仲里は送りバントを決めていた。チームで4番に座っている彼だから、その打撃もなかなかのものだが、それに固執することもなく、二塁走者の六文銭を三塁に進めることだけを考えていたのだ。
「仲里君、ナイスバントだ」
 ベンチで彼を出迎えた監督の楓は、真っ先にその労をねぎらっていた。
 この試合は、選手交代の時期を除いて、全ての判断を選手に委ねる“ノーサイン”で行くことは皆に伝えている。それだけに、チームバッティングに徹する仲里の存在は、たった一試合の関係とは言え、監督として心強いものだと思う楓であった。
「HAHAHAHA!!」
 6番打者は、両チームにおいても最大身長となる、能面である。ちなみに、初回の打席は、清子の“ナックル・パーム”に全くタイミングが合わず、三振に倒れていた。

 ゴキン!

「おっ!」
 仲里の送りバントを見ていた直後だったからか、最初の打席の大振りを改めた能面のスイングが、外角低めの直球を右方向に高々と打ち上げた。
(アルめ…。よく、反省していた)
 仲里に続くように、チームバッティングをしてみせた能面の姿に、自チームの監督として楓は目を細める。その視線が追いかける打球は、右翼手が少しばかり後ずさりして、難なく捕球したが、距離的にも犠牲フライとしては十分な当たりであった。
「ホームイン!」
 三塁走者の六文銭が、きっちりとタッチアップをこなして、同点となるホームベースを踏む。“押し出し”というあまり良くない形で失った1点を、すぐに取り返したことは、相手に傾きかけていた試合の流れを、元に戻す絶好の展開であった。


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