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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第14話-15


「……ふぅ」
 城南大学付属病院の最上階にたどり着き、誠治は深呼吸をひとつ挟んだ。病院にいるはずの彼は、しかし、上下にジャージを纏っており、トレーニングの最中である事を伺わせている。
「誠治さん、具合は……?」
「ええ、問題ありません。膝が、笑いそうになってますがね」
 その隣には、同じようにジャージ姿の葵がいた。彼女は額に汗こそ浮かんでいるが、息を乱した様子はなかった。
「二往復しただけだというのにこれでは、やっぱり足腰のスタミナが足りていませんね」
 二人は、15階あるこの病院の非常階段を、1階から上がりそして下るという、“階段昇降トレーニング”をこなしている最中であったのだ。
 不整脈による運動制限が、今年から解除になった誠治は、“隼リーグ”の序盤戦こそは往時の打撃を髣髴とさせる活躍をして見せた。しかし、終盤に入ると、見えない疲労の蓄積か、下半身の粘りを欠く様になり、打撃フォームを崩して調子を落としてしまった。
 そこで、下半身のスタミナ強化のために、主治医である杉原医師の検査と指導を受けながら、“階段昇降トレーニング”を始めるようになったわけである。
 誠治と葵が通っている城南大学付属病院は、総合病棟を持っている規模の大きい病院であり、“階段昇降トレーニング”に使用できる非常階段だけでなく、その周縁を一回りするだけでもアップダウンを含めて大した距離になる。
 今は落ち着いたとは言え、誠治の体調は“完全”というわけではないから、脈拍に大きな負担をかけないよう“スロートレーニング”に徹しなければならない点があり、一般のトレーニング施設ではなく、この病院を利用しているところは、二人の“賢さ”というものだろう。
 お互い、定期的な検査を抱えている身でもある。そういう意味でも、病院でのトレーニングは、いろいろと都合の良い話でもあった。
 ちなみに、不整脈を患った誠治は“循環器科”の定期健診を受けており、そして、葵は、“心療内科”に通院している身であった。
 葵は“パニック症候群”の罹患者である。今はかなり改善されているが、完治はしていない。人混みに酔ったりすると、その症状がたちまち顔を出して、立っていることも侭ならなくなってしまうのだ。
 ただ、誠治が視界にいると、その症状はかなり改善する。どのような状況に自分が陥っても、それを全て受け止めてくれるという安心感が、葵の“パニック症候群”の発露を抑えてくれるのであろう。
 それでも、“夜尿症”を始めとして、葵の自律神経には不安定なところがある。今まさに、“神宮球場”で行われている“東西交流戦”選抜チームのメンバーとして打診をされながら、それを辞退した理由のひとつでもあった。
 もっとも葵本人は、“東西交流戦”に興味はなかった。彼女は、愛する誠治が悲願としている“隼リーグ”の“総合優勝”を成し遂げることだけを、自身の宿願としている。


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