異世界の王V-1
「ここからはゼンに任せたほうが良いようだね」
そう言うと、ダークは後方の扉へと目を向けた。堂々とした足音が響き、それがゼンのものであることに気付く。
「・・・やっと来たか」
ガチャ、と扉が開いて人界から戻ったばかりのゼンの姿があった。
「すまない、遅くなったな」
「ふふ、ゼンの遅刻は今に始まったことじゃないからね」
付き合いの長いダークは、ゼンのそれが当たり前かのようにのんびりとした口調で話す。
「皆、最近ゼンが入れ込んでいる娘の話を聞きたがっているようだよ?」
「そうだな・・・そろそろ話してもいい。いつ人界への回路が閉じるかと思ったが、その心配はなさそうだしな」
「・・・ダーク、どこまで話した」
「人界の存在と、その王が女性ってことくらいかな」
ゼンは小さく頷くと、ドカっと椅子へ腰を下ろした。それを合図のようにグロリアとヴァイスがそれぞれの椅子へと戻ってくる。
ディスタを中心に五大国の王が顔をそろえたその風景は他を寄せ付けない圧倒的なオーラと気品にあふれ、常人ならば押し潰されてしまいそうな覇気に包まれている。
「揃ったな。
では・・・各自、国の状況を報告願いたいが・・・・」
『・・・何も変わらぬ・・・』
精霊王のヴァイスが始めに言葉を発した。毎度変わらぬ国の何を報告しろというのか、この王の集まりを苦手としている彼はいつも先に退出してしまう。
ヴァイスの言葉に ふぅ・・・と小さなため息をついたディスタはグロリアへと目を向けた。
「どの国も変ったことなんてないだろ?今日のメインはゼンの話でいい」
グロリアに目配せされたゼンは、ディスタに向き直った。
「出来れば手短に願いたい。
すぐにでも人界に戻りたいんだ」
「まったく・・・今回だけだぞ」
諦めた様子のディスタにゼンはそれぞれの王を見渡して、この中に人界の王が・・・葵がいたら、どれだけ心が弾んだだろうと六大国の王がそろう姿をいつか叶えたいとこの時思っていた。