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翼の記憶
【ファンタジー 恋愛小説】

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異世界の王W-1

「少し前になる。俺達の国を繋ぐ、どこの領域にも属さない"狭間"があるだろ。そこに不思議な光の渦ができていたんだ」






「報告は受けていた。
そなた以外は触れることもできない、という噂もな」






ディスタは考えるように腕組みをしている。光の渦のことに関しては前例がなく、調べようがないのだ。







『・・・なぜだ?なぜ雷の王だけが・・・』






「その答えはおおよそ理解はできたつもりだ」





人界にも雷が存在し、それを司る神がいると人々の間で信仰されていること。その姿や神具がゼンのものと酷似しており、さらには人界の王が雷帝というその存在を許しているからだろうということだった。






「グロリア、お前さんは無理だろうな。葵がその存在を許すわけがない」






ゼンはジロリと鋭い視線をグロリアに投げかけると、不機嫌そうにグロリアは口を開いた。





「どういう意味だ?」






喧嘩を売られたと思ったグロリアの切れ長の瞳が細められた。






「民に危害を及ぼす危険のあるものを、葵が・・・人界の王が許すわけがない」






「あおい?」





ディスタは聞いたことない名前を疑問に思い、ゼンに問いかけた。






「あおいというのが人界の王の名か?」






「・・・あぁ。
見た目はまだ幼いが・・・即位してからかなりの時がすぎているはずだ。神具は杖、力の象徴は・・・"大いなる慈悲"だろうな」






「あんたとどこか似たオーラをもっているんだディスタ。結界の生成、治療に浄化・・・」






結界の生成、治療に浄化といえば悠久の王が象徴する力だ。違うものは神具。代々悠久の王には神剣が授けられる。その代によって形は様々だが、人界の王の神具は神杖だという。





「慈悲を象徴する王の神具が杖とは・・・己の身を守る術はもたぬのか?」






ディスタがふと、そのことが気になった。王の命は長く、城に仕える者たちとは比べものにならない。己を守るためにも、民を守るためにも神具はとても大事なものなのだ。






「人界の王の力は・・・
己を守るためのものは何ひとつないんだ。そのために神官がいるんだろうけどな・・・」








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