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『神々の黄昏』
【SM 官能小説】

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第4章-1

      第4章

 翌十七日、祐志は休みを取った。
 高橋にはあいかわらず電話はつながらなかったし、またメールの返事も来なかった。
祐志は中村大輔という友人が横浜女学院高校で数学を教えていることを思い出し、彼の携帯に電話して、なかば強引にその日の昼休みに学校で会う約束を取りつけた。
 横浜女学院高校は根岸線の石川町駅から歩いてすぐの所だった。少し早く着き、応接室に通されて待っていると、昼休みになって中村が顔を見せた。
「どうしたんだい、いったい。急に電話してきたかと思えば、すぐに会いたいだなんて」
「この学校の川野利佳という生徒のことでちょっと聞きたいんだ」
「川野さんなら、去年担任だったからよく知ってるけど、でも、どうして、また」
「今は言えない。でも時期が来たら必ず話す」
「おいおい、まさか防衛機密だなんて言うんじゃないだろうな」
 中村は冗談のつもりで言ったのだろうが、祐志にはグサッと来た。しかし祐志は単刀直入に聞きたいことを口にした。
「川野利佳さんて、どんな生徒だった?」
「そうだなあ。普通の明るい生徒だったよ。ただ欠席が多くて、出席日数がぎりぎりだったかな。それに学校に来ても、あまり授業を聞かずに、窓の外ばかりを眺めていた記憶があるなあ」
「ここ一週間くらいはどんな様子だった?」
「それは知らない。今年は担任じゃないし、授業も受け持っていないから」
「そうか。それじゃ、川野さんの自宅の住所を教えてくれないか」
「それは、いくらお前の頼みでもできない。個人情報だからな」
「うむ」
 祐志は一息ついた。そして、ふと、一昨日のダンスパーティーの会場で、利佳といっしょにいた横浜女学院高校の生徒を、高橋が智子ちゃんと呼んでいたのを思い出した。
「なあ、中村。川野さんの友達で智子という名前の子はいないか」
「智子? ああ、水野智子さんのことかな。川野さんと水野さんは去年同じ俺のクラスで親友だったよ。水野さんは今年も俺のクラスだ。でも、あの二人、クラスは別々になっても仲良くしてるみたいだよ」
「その水野智子さんをここに呼んでくれないか」
「何をする気だ?」
 中村は少し険しい表情を見せた。
「ちょっと尋ねたいことがあるだけだ。理由は後日必ず話す。俺を信用してくれ。そして信用ついでに、水野さんを呼んだらお前は席を外してほしいんだ」
「俺がいちゃまずいのか」
「教師が同席してると話しにくいこともあるだろうからな」
 中村は少し思案した後で、
「わかった。お前を信用しよう。水野さんを呼んでくるよ」
 中村は応接室を出て行き、五分ほどで入れ違いに水野智子が入って来た。智子は祐志の顔を見ると、ハッと驚いたような表情になり、
「北岡さん、ごめんなさい」
 と頭を下げた。
「なぜ謝る?」
「だって、私たち、北岡さんに何か迷惑をかけたんでしょう。相模湖のあの館で、谷本さんたちが、北岡三佐を罠にはめるとか何とか話しているのをちらっと聞いたものだから」
「谷本って、久野あやかの執事の谷本か?」
「久野あやかって、誰?」
 智子はそこまでは知らされていないようだ。しかし祐志は確かな手応えを感じた。
「君、そんなとこに突っ立ってないで、ちょっとここに座って、知っていることをすべて話してくれないか。何を聞いても、君に対しては絶対に怒らないから」
 祐志は智子を自分の向かいに座らせた。さっきまで中村が座っていたソファーだ。そして智子は話し始めた。
「先週の土曜日、利佳と桜木町で遊んでいたら谷本さんという人から声をかけられたの。いいアルバイトがあるからって。そしてあの洋館に連れて行かれて、高橋さんにも紹介されて」
「ちょっと待って。高橋とは以前からの知り合いではなかったのか」
「ううん、先週の土曜日に初めて会ったばかり。ただ、北岡さんの前では、以前からの親しい知り合いであるかのような演技をしろって言われたわ」
「何だって!」
 先週の土曜日と言えば十一月十二日。高橋から電話が来て、十五日の夜のダンスパーティーに誘われた日だ。そうすると高橋もグルだったのか。道理で電話もメールも通じないはずだ。


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