そして、最後の夜-2
僕は真奈美さんをまじまじ眺めてしまった。
あの頃は背丈も僕と変わらなかったけれど、今は僕の口と頭のてっぺんが同じ高さくらいだ。
そしてあの頃は男の子と変わらない骨ばった体つきだったけど、今は丸みをおびた女の子の体になっていた。
「ミツル君、もう一回相撲で勝負しようか?」
真奈美さんがスカートを履いたまま、そんなことを言うから、僕は笑った。
「あれ? どうして笑ったの? 負けないよ、簡単には」
僕はパジャマを着たままだったが、仕方なしに布団を隅に移して、構えた。
組み付いた途端足をかけられたので、しまったと思った。カワズガケで後ろに倒されてしまった。
ええっ?! こんなに体格差があるのに、どうしてやられてしまうんだ。僕は今度は足をかけられないようにガムシャラになってサバオリをかけた。
今度は簡単に倒すことができた。でも、僕は気づいた。僕が抱きしめてるのは、すっかり女の子の体になっている真奈美さんなのだ。
僕に抱きしめられたまま仰向けになった真奈美さんはあの、甘ったるい声で言った。
「降参だよ……ミツル君……でも、このままでいよう」
僕は自分の心臓の鼓動がわかった。それとも真奈美さんの心臓の音なのか?
真奈美さんはスカートを履いたまま両足を僕の腰の外側に開いていた。僕のお臍のちょっと下あたりに真奈美さんの股の恥骨のところが当たっていた。
その骨の上の下腹が呼吸するたびに膨らんだり凹んだりする。真奈美さんはじっと僕を見ていた。僕は手を伸ばして真奈美さんの眼鏡を外して畳むと少し離れた畳の上に置いた。
僕は真奈美さんの目の焦点があうところまで顔を近づけた。それはかなり近かった。目の焦点があった時、僕は真奈美さんの唇にそっと唇を押し当てた。鼻息がかかった。
僕は真奈美さんの体を抱きしめて、口に舌を入れた。真奈美さんの唾液は甘い味がした。
「あ……らめっ……むぷっ……らめらったら」
真奈美さんは顔をそむけると目から涙を流した。僕ははっとして体を離して起き上がった。
仰向けになったまま真奈美さんは顔を横に向けて泣いていた。
「ファースト・キスに舌を入れるなんて……嫌いだよ」
「ごめん。でもこれからHしなきゃいけないから、これくらいしないと……」
「それなんだけど……」
真奈美さんは起き上がると僕に言った。
「ミツル君は私の中に入れちゃ駄目だよ。ミツル君は何もしちゃ駄目。今みたいのも駄目。約束してくれる?」
「えっ、それじゃあ、2人とも殺されちゃうよ。入れなきゃ駄目なんだ。嫌だろうけど、それをしなきゃすぐ殺されるんだ」