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女嫌いな俺
【コメディ その他小説】

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佐伯の逆襲-2

俺はこれは絶対佐伯の文章だと思った。脳みその腐った奴の書く落書きだ。特に後半はひどい! 俺は笑ってしまった。猿知恵の限界を見た気がした。
佐伯は勝ち誇ったように俺を見ながら目を輝かせていた。今にも俺が怒り出すのを期待してわくわくしてるんだろう。笑える、これは絶対笑える。
「ねえ、どうして黙ってるの? 天野君、なんとか言ったらどう?」
俺は佐伯佳美に近づくと奴の両肩に手を置いた。佐伯は俺に殴られるのかと思って顔を引きつらせた。
「佐伯、葦野桜に伝えてくれ。お前となら友達になれそうだって。いつでも声をかけてくれってな」
震えながら佐伯は頷いたが俺が手を離すと首を振って眉間に皺を寄せた。
「えっ、何故? 葦野さんと友達? なんで怒らないの?」
「佐伯、お前俺を怒らせようとして、その手紙を書いたのか?」
すると佐伯は慌てて口を両手で塞いだ。ばればれじゃあないか。
「その手紙にはお前の腐った人生観がてんこ盛りになっているんだよ。周りが嫌いな女の人ばかりで不幸だと思いますだって?
お前だって周りに好きな男がいないくせに着飾って変な色気を振りまいている不幸な女じゃないか」
「いつ私が色気を振りまいているっていうの?」
長い髪の毛をしきりに手で撫でたり、両手を頭の後ろに回して胸のラインを目立つようにしたり……色々やってるのを知らないとでも思ったか、と言おうとしたがこれはこいつの手品の種だから可哀想だから言わないでおいた。
「天野君は美人が好きでないみたいですね、だって? 美人ってもしかしてお前のことか? お前の顔はただ特徴がないだけなんだよ。その証拠に一晩寝て朝起きるとどうしてもお前の顔が思い出せないんだ。別に思い出したくもないけど、それだけ特徴がないんだよ。まあ、言ってみればノッペラボウなんだよ」
佐伯の眉と目尻は吊り上がった。
「私はノッペラボウじゃない! 私だって私の個性があるよ。天野君ずいぶんひどいんじゃない?」
俺は言葉つきを少し柔らかくした。あまり相手を興奮させると引っ掻かれそうな気がしたからだ。
「そりゃ、そうだよ。親から貰った大切な顔だからな。だけど眉毛を剃ったり、化粧で誤魔化したり、髪で顔のラインを隠したりして、特徴を自分で消しているんじゃないか。自分でノッペラボウになりたがってるんだよ」
「そんなことない! そんなことない! 天野君なんて、だいっ嫌い!」
佐伯佳美は足を踏み鳴らし、顔を真っ赤にした。
「良いよ、嫌いでも。だけど、まあそれはせめて胸の奥に秘めておいてくれ。それが人間社会の最低限のエチケットってもんだ」
すると佐伯佳美は急に俺に近づくと平手で俺の頬を思い切り引っぱたいた。
「パッシーン!」
痛ぁぁい、と心の中で叫んだね。何をしやがるんだ。この腐れ女は……、だけど男同士じゃないから、殴り返せない! 俺は涙目になりそうになったのを深呼吸して引っ込めたよ。俺はうっすらと笑って言ったと思う。
「もう……お前の顔は卒業まで見たくない。だから今ここで木下の返事をくれ。約束を守ってくれれば、今のはチャラにしてやる」
ああ、俺って器が大きい男だなあ。自分にほれぼれするよ。腐れ女は放っておいても自然に土に還るもんだ。
「答えはNOよ」
「それだけか?」
「それだけよ」
そうか、こいつには一言言ってやりたいな。俺は思ったね。
「分かった。伝えておくよ。だけどお前さ、これからもきっとお前は断り続けると思うよ。だれが言い寄ってきてもな。
だって言い寄って来る男はノッペラボウのお前が好きなんだものな。それなのにお前は本当の自分のことを好きになってくれる男を待ってるんだ。
笑えるだろう? 小学生でも分かることだよ」
俺はそれだけ言うと背中を向けて歩き出した。すると背後ですすり泣く声が聞こえたような気がした。
だが、俺は振り向かなかった。最終兵器を出してきやがったなと思ったが、振り向いたら負けだと思って俺はそのまま歩き続けたよ。ふーっ、これで今回のミッションは完了した。俺もようやく肩の荷が下りたって訳だ。

 


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