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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第11話-52


“隼リーグ”前期最終戦
  法泉印大学 対 双葉大学

 【法泉大】|000|101|000|2|
 【双葉大】|001|000|010|2|

「ゲームセット!!!」
 “相克”というべき両チームの大熱戦は、ついに終了した。
 8回の裏に、大和の適時二塁打で同点に追いついた双葉大学はしかし、桜子が本塁生還を目指したものの、響の好ブロックによってそれを阻まれ、結局は同点のまま、両者共に相譲らず、そのまま引き分けとなった。
 これで互いに勝ち点“1”が追加され、法泉印大学は前期の優勝が決まった。双葉大学は、惜しくも、3位という成績で前期を終えることになった。しかし、リーグ戦が始まる前の下馬評を考えれば、相当な善戦であったとも言える。
 観客たちの拍手を受けながら、激戦を繰り広げた両チームが互いの健闘を讃えあっていた。
「楽しい試合だったぜ、大和」
「僕もです。ありがとうございました」
「礼を言うのは、こっちのほうだ。最後に、最高の試合をさせてもらった。……ありがとよ」
 そう言って、鼻の頭を掻く隼人であった。
「しかし、まあ、あれだな。お互い将来は、“たくましい女房”を持つことになりそうだな」
 8回裏の、壮絶なタックルの応酬を言っているのだろう。
「………」
 確かに、女同士の激突とは思えないほどの、見ている方が背筋を震わせるぐらいに壮絶なガチンコ対決であった。
「響さん、本当に痛いトコないの?」
「はい。このとおり、ピンピンです。桜子さんこそ、平気なんですか?」
「うん。このとおり、ピンピンだよ」
 男二人が見つめる先で、女二人は互いに力瘤を作るような仕草でやり取りをしている。なんというか、本当に“たくましい”としか言いようがない。
「大和、あれはすげえ女だから、逃がしたら一生後悔するぜ」
「わかっています。……僕にとって、最高の女性(ひと)です」
「うわ、のろけやがったなコイツ」
 隼人が苦笑交じりに、大和の胸を二度ほど軽く小突いた。
「時によ、大和。プロって、お前、考えているか?」
「えっ?」
 不意に隼人が真顔になって、思いがけないことを口にした。ドリーマーズとの練習試合で、試合の後に松永からかけられたものと、全く同じものだったから、大和は狼狽を隠せなかった。
「あそこ、見てみな」
 そういって隼人が指差す先には、ハンチング帽を被り、サングラスをして、腕を組みながらこちらを眺める、初老の男の姿がある。
「あのオッサンな、多分、プロのスカウトマンだ」
「!?」
「実はな、一度声をかけられたことがある。“プロを考えているか?”ってな。前にも言ったように、俺は別に懸けるものがあったから、“考えていない”って応えたが、“そうか”って、それだけ言って、サヨナラしたんだ」
「………」
 やはり、隼人はプロのスカウトの目に留まるほどの逸材だったのだ。だが、その誘いを即座に断るほどに、彼には懸けるものがあることを聞いていたから、“惜しい”と思いこそするものの、翻意を促そうとは思わなかった。
「何処の球団かは、聞かなかったし、向こうも言わなかったからわからねえ。だが、もしも、お前にも声をかけてくるようなことがあれば…」
 その時は、どう応える? そう隼人は、大和に問いかけていた。そしておそらく、近いうちに“その時”は来るだろうとも…。
「まあ、今は答えを出せないだろうから、胸の奥にしまっておけばいい」
「………」
 これで二度目の、“プロは考えているか?”という問いかけだ。大和は、投手として復活し、そして、自分を蘇らせてくれた仲間たちと野球をすることに全力を懸けてきたから、“プロ”に対する意識というものを、これまでは全く想像してこなかった。
 だが、しかし、もしも、プロのスカウトが声をかけてきたとしたら…。
(いや、まさか、な…)
 それはまだ実感もなく、また、実現するとは思えない問いかけでもあった。
 わずかに湧いた新たな“志望”を、大和はそのまま胸の奥底に封じ込めて、今は、最高の試合の余韻に浸ることにした。


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