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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第11話-51

 大和は引き絞っていた全身のバネを一気に解放し、バットの先までそのベクトルを伝えるように、その鋭いスイングを始動させた。
 そのヘッドが唸りをあげて、隼人の投じた“剛速球”に重なり合う。

 キィンッ!!

「!!」
 猛烈に振り抜いたそのベクトルによって打ち出された、“光速の矢”のような打球が、右中間を切り裂いていく。
 それでも、弾道がやや低く、また、途中から失速を始めたのは、隼人の球威に押し込まれていたからだろう。
 中堅手の伊地知(いじち)が、必死にその打球を追いかける。打球の落下地点を目掛けて、決死のダイビングを彼は試みる。そうでなければ、届かない。

 バシッ…!

 一瞬、ボールはそのグラブに収まったかに見えた。
「!?」
 しかし、打球の勢いを捕まえきれずに、ボールはグラブから弾き出て、無情にもグラウンドを転々としていた。
「フェア!」
 二死だったため、三塁走者の岡崎は、打球が上がった瞬間には既に本塁を駆け抜けていた。
「ホームイン!」
 これで、双葉大学は1点を記録し、同点に追いついた。一塁走者の桜子が還ってくれば、一気に逆転となる。
「桜子! 行って!!」
 品子が、腕を廻していた。桜子はそれを見て、三塁ベースも一気に駆ける。例え足は遅くとも、必死にそれを回転させて、逆転のホームを目指して馳せる。
 伊地知が捕まえ切れなかった打球は、右翼手の伏見坂(ふせみざか)が素早くカバーして、中継の二塁手・大仏に投げ返していた。
「梧城寺!!」
 大仏はすぐさま、振り向いて、捕手の響が構えるミット目掛けて、渾身の返球を投げていた。
 タイミングは、どちらにも微妙なものだった。
「だあぁっ!」
 桜子は、体ごとぶつかる勢いで、ホームに向かって突進していく。相手も女なら、こちらも女だ。遠慮は、考えていなかった。
「喝ッッ!!」
 ミットに送球を受け止めた響は、“猪突猛進”という言葉そのままに迫ってくる桜子に対して、避ける素振りを全く見せず、真正面から激突した。 

 ドガッ!

「響!」
「桜子!」
 激突の衝撃で、二人の身体が大きく跳ねた。隼人と大和の、激しく衝突した二人を心配する叫びが、お互いに交錯する。
 タッチのすぐ後に、桜子の足はホームを踏んでいたから、もしも響がその突進に負けて、ボールを零していれば、その時点で双葉大学に逆転の“1点”が記録される。
 固唾を呑んで、主審の動静を、全ての人間が見守っていた。
「……アウト!!!」
 響は、ボールを、まるで腕の中に抱き締めるように、しっかりと掴んでいた。それを確かめた主審の手が高々と空に向けて挙がり、桜子のタッチアウトを宣告していた。
「響、響、大丈夫か!」
 カバーに入っていた隼人が、仰向けになっている響にすぐさま駆け寄る。
「にぃにぃ。平気、大丈夫」
 マスクの下で、響がにこりと笑っていた。すぐさま半身を起こして、同じようにホームベースの上で、似たような格好をしている桜子にも、その笑顔を向ける。
「桜子さん、大丈夫でしたか?」
「あ、うん。ちょっと、強引だったかな」
「気にしないで。もっと凄い突進を、イノシシにもらったことありますから」
「イノシシ!?」
 桜子が、響の野性味溢れるタフさに瞠目し、呆れたように目を丸くしていた。
「イノシシにも勝っちゃうんじゃ、あたしじゃ叶わないか」
「いいえ。桜子さんのタックルも、十分にイノシシ級でしたよ。仔イノシシぐらい」
「あたし、こどものイノシシなの!?」
「はい」
「……ぷっ」
「ふふっ…」
「「あはははは!」」
 タックルで激しくぶつかり合った二人とは思えないほど、なんとも暢気で陽気な、桜子と響の会話であった。


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