妙な転校生が来た?-6
「…女子の口から、何を言わせたいの?」
往生際が悪い猛がつい助け船を求めたが、美咲は剣呑な目つきでそれを一蹴した。元々釣り目気味だった美咲の目がさらに釣り上がり、なにやら背後から黒いオーラが見えそうだったのを感じて猛はもう堪忍して、そっと音をたてないようにドアに聞き耳を立てる。
そして、聞こえてきた声に猛は硬直した。
「―――――――」
聞こえてきたのは、女の嬌声。さらには男の楽しそうな声も一緒に。
聞き耳を立てなければ聞こえない程なので、今聞こえてるのは猛だけだろう。というより、きっと美咲は分かっているから猛のように耳を近づけたくないんだろう。
「――――ぁあっ」
だけど不意に、耳を近づけていない美咲にも女の嬌声が聞こえてきた。
そしてさっきよりも鮮明に聞こえてきたその艶めかしい声に猛は我に返って慌ててドアから離れる。そしてそろりと美咲を見ると今度は美咲が硬直していた。向こうではきっと体勢でも変えたのか、移動でもしたのか…とにかくどうしようかと猛が困惑していると美咲の体が微かに震えているのに気が付いた。猛の方が頭一個以上身長が高いからその表情は窺えないが、さっき猛を威圧した時以上の黒い何かが美咲に纏わりついてるように感じて猛は思わず一歩後ずさる。
猛は純粋に、美咲を怖がっていた。
そんな猛に構うことなく、美咲はゆっくりと一歩前へ進み控えめにノックをした。
「…会長。上代美咲です」
そのノックと明らかに事務的な声で廊下に誰かいることに気が付いたのか、女の嬌声がピタリと止む。だけど、次に聞こえてきた男の言葉に猛は前髪の奥で目を見開きまた硬直することになった。
「開いてるぞ。入れ」
…開いてる?入れ?今しがたそんな声が聞こえてきたというのに、入れとはどういう意味だろう。いや、部屋に入れと言うことだろうけど…。硬直した猛を放ったまま、美咲は大きく溜息をついて遠慮なくそのドアを開ける。