幻影-20
触れているのは自分のはずなのに、にじり寄ってくるような震えをシウは感じていた。
吐き出される呼吸が自分に作用することはない。薬もとうに抜けきったはずた。
・・・・なのに、どうして。
そんな自分の疑問を確かめるように、アズールの反応を窺いながら、熱を持つ肌に指先を滑らせる。
「・・・・・っ」
ぐ、っとアズールの肩に力が入る。
「・・・ここ?」
「ん、ちょっとビックリしただけ・・・・」
直接地肌に触れているせいか、手に伝わる呼吸のリズムが心なしか大きい。
他者と比べたことはないが、男の割には薄い身体だと思う。
それでも自分の身体とは胸筋から腹筋の厚み、骨の太さに至るまで、全くの別物のように触覚は捉えていた。
触れと言われても、今一要領が掴めない。
ましてや自分がされているようになど、そもそも身体付きが違うのだから同じように出来る訳がない。
「アズールはいつも何を考えてる?」
「え・・・?」
シャツの中の手に視線を落として呟く。
「あたしを触ってるとき、何を考えてる?薬の効き方?」
「・・・・そうだね」
「薬が効いて弱くなったところ、探すの?こうやって」
「っ、・・・」
固くなった突起に滑らせた小指が引っ掛かる。
同時に低く、聞き逃してしまうほど細やかに漏れた吐息に、ぞくりと背筋が震えた。
まただ、と不思議に思う。
自分は触れられていないのに、何故かこの身体はアズールの微妙な変化に呼応するように疼く。
「・・・・変態は、あたし・・・?」