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溺れる爪痕
【ファンタジー 官能小説】

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幻影-15

 謂わば、シウはアズールの代弁者といっても過言ではない。

うん、と頷いて銀色の髪をひとふさ掌で包み込む。

「そんな貴族サマの腐った戯れなんかに俺がなんで必死になって時間を割かなきゃならない?向こうは何も解らないんだ。俺が出来ないと言えば仕方ないと黙るし、出来たと言って劣悪品を献上したところでその違いも解らないだろうね」

「つまり、手を抜いても構わないって言いたいの?」

「いや、開発や調合は好きだから真面目にやるけどね。俺は俺のやりたいようにやるってことだよ」

「やりたいようにやれる立場だって言いたいんだろ?嫌味な奴だな」

「あはは!正解!それが出来る立場なんだから活用して悪いことあるもんか」

それに、と続けてアズールは上体を起こし、ベッドヘッドに凭れ掛かる。

「そんな薬に頼ることに悦を覚えて、条件反射で反応する奴隷を抱えて、何が愉しいのか俺には理解し難い。これは矛盾してるね。だけどいくらここで過ごしても、どうしても貴族に寄った思考は持てないんだ」

「・・・あたしにはアズールの思考もよく分からない」

「うん。それでいい。こうして、今みたいに俺の内緒話をじっと聞いてくれるだけで」

恋人ならば、ここで引き寄せて口付けを交わすだろうか。

そうしてシウを翻弄して困らせてみたくなったが、真剣に耳を傾けてくれる彼女の姿勢にアズールは敬意を払うことにした。


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