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溺れる爪痕
【ファンタジー 官能小説】

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幻影-16

 それにこのままの状態は逆に翻弄されかねない。

息の届く距離でその無自覚な呼気を吐き出し続ける彼女は、媚薬を飛散させているのと同じなのだ。

解毒との鼬ごっこはアズールとて御免被りたい。

「アズールの手、なんか熱い。眠ってたから?」

「ん、そうかもね」

「薬師が身体壊すとかやめろよな」

「・・・・っ」

首筋にそろりと添えられた小さな掌を咄嗟に避ける。

びくりと驚いたように硬直したシウは、行き場のなくなった手を宙で止め目を見開いた。

「長く話し過ぎたかな。もうお休み」

途端に不機嫌を露呈した表現に笑みを投げ、銀糸の頭を撫で付ける。

「なあ、アズール」

「なに?」

「お前、ムカつく。怒るならちゃんと言葉で言えよ。あたしはペットだから言われなきゃ分からないんだよ」

「どうしたの?今のが気に触ったなら謝るよ。なんだかやっぱり調子悪いのかもね」

「違うってば!アズールはいつもそうだ!っていうかあたしにこんなこと言われてなんで怒らないんだよっ?普通怒るだろ?なのに訳分からないとこでばっかり黙りで気付くと怒ってたりして、でも何も言わなくて!意味分からないんだよ!」

目を見開き驚いたのはシウではなく、アズールの方だった。


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