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中道深夜探偵事務所へようこそ
【フェチ/マニア 官能小説】

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中道の回想-1

中道深夜探偵事務所
■中道の回想

中道は回想した。

今回の相談者は3名。
ずっと想う人を忘れられなかった女は、どうにもならなかった恋心に苦しみ、やがて彼に対して「自分を苦しめる憎むべき敵」という幻想を抱いた。そして、復讐の為、用意周到に近づいた。しかしながら、最後には彼からの純粋な想いが通じて彼女を幻想から救ってくれた。
その彼女の仲間だった女が見た幻想は、とてもドラマチックなものだった。高校時代からチームを組んで男を食い物にし、贅沢かつ派手な性生活を満喫。彼女はそれが栄光だと思っていたのだろう。後に白馬に乗った王子が現れる。しかしある時、それら華々しい幻想は脆くも崩れ去り、彼女には残酷な現実が待っていた。現実に耐えられず、命を絶とうとした彼女だったが1人の男に救われる。

そして、彼女を救った男は…



「色々とお世話になりました」
「いえ、こちらこそ」
事務所では政夫が挨拶に訪れていた。
彼の話によれば、妻の千恵子が通っているフィットネスクラブのコーチである伸二と明良は、辞めて他所へ引っ越したらしい。そりゃそうだろう。人様の家に上がり込み、会員を陵辱したことが明るみになったらタダでは済まない。しかも、それが失敗したとなれば、恥ずかしくて道も歩けないだろう。

「ただ、政夫さん。それで本当に良かったのですか?」
「ええ…」
中道の心境は複雑だった。これほどまでに真面目で律儀な男なら、遊び好きな千恵子よりも、もっと相応しい相手が居るだろうと思ったのだ。
「一時、離婚を考えました。離婚届を妻に突きつけるとこまではいきました。ですが、私には千恵子しか居ないと分かりました。私はこれまでにも千恵子に愛情を注いできましたが、妻は私に愛情を殆ど持っていません。でも、私には千恵子しか居ないんです」
確かに、政夫がそれで良いと思うなら、僕がどうこうと口を出す問題ではないと中道は思った。
政夫は続ける。
「それでも、私は構いません。これまで通り、妻に接します。それにね、いつかは千恵子と解り合える日が来るような気がするんですよ。まあ、私の勝手な妄想かも知れませんが。でも、いいじゃないですか。それぐらいの妄想なら」
中道は政夫の話を聞いていてフッと笑いが込み上げてきた。それは、春のそよ風を思わせるような清々しいものだった。
「ただ、中道さん。時には強引に行くことも必要ですね」
中道は、一瞬何のことかと思ったが、直ぐに理解してからこう答えた。

「はい、そうですね」



中道は再び回想した。
聡美や麻衣子達4人にはこれからも辛い現実が待っているだろう。また、政夫には更に辛い現実が待っているかも知れない。
しかし、それが幸か不幸かという話になると、全く別のものだ。いや、苦しいとか楽しいというのも、本当は自分の心が勝手にそう決めているに過ぎない。

僕は今回で「財物だけでは決して買えないもの」を見つけられたのだろうか?

親父、アンタは今でも僕を見て笑っているのか?


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