山頂に沈む幻想-3
「内藤が館から逃げ出したみたいや。あのボケェ」
美紀が感情を沸騰させていた。無理もないわ。4人の中では最も感度が悪く、レイプパーティーをやっても大概は不満を残しているのが美紀。それが変な関西弁訛りの粗暴な言葉遣いに繋がっているかどうか私には解らないけど。
それと反対に一番感じやすいのが理沙なの。彼女って大柄な割に気が小さいのよ。この辺も美紀と正反対なんだけど、ソフトでまったりしたセックスを好むのよ。内藤もカラダはあんなんだけど、セックスは以外とあっさりしていたわ。
私は知っていた。
理沙が内藤を逃がしたのよ。私達が2階のシャワー室にいる間に内藤が下へ降りて行くのが見えた。理沙は気づいていた。それで、聡美と美紀にずっと話し掛けて注意を引き付けていた。大切な人にはレイプなんて出来ないから。理沙も今は私と同じ気持ちかも知れない。彼女もチームを離れたいと思っているんじゃないかしら。
そういえば、聡美がこんなこと言ってたわ。
「次の獲物は超大物よ」ってね。何でも聡美にとって憎むべく因縁の男性らしいのよ。でも、私思うんだけど、憎しみというか憎悪っていうのは愛情と同じもので、ほんの些細なズレで変わるものじゃないかってね。だから、次の獲物って聡美が心底惚れた男性じゃないのかなって思うのよ。
もしかしたら、次の獲物の男性が私達チームにとって最後になるかも知れないわ。そんな予感がするのよ。聡美もこんなチーム解散して女として幸せを掴むべきよ。
「で、リーダー。内藤どないする?」
「放っておいたらいいわ。それよりも、遂に始動するわよ。因縁の相手を捕獲するの。あたし、生保レディーになって彼に近づく予定なのよ。そして、あたしが長年味わった苦しみを与え続けてやるのよ」
私の目には聡美の団子鼻から脂が滴りおちているように見えたわ。顔にはそばかすがくっきりと浮かび上がっていた。
携帯が鳴った。相手を確認する。あっ、明良さん。私は無意識に出てしまった。
『麻衣子。元気か?』
「あ…明良…グスっ」
『どうしたんだよ。急に音沙汰が無くなって。麻衣子が心配で仕方なかった』
「ううっ…グスっ…」
『泣いてるの?』
「いえ…何でもないのよ」
逢いたかった、やっぱり明良に逢いたかったわ。
私は明良の車に同乗している。もう逢えないかと思ってたから。
「よし、今日はドライブしよう」と明良が言った。
「ホント?嬉しいわ〜」
ダークブルーの空に宝石を散りばめた無数の灯。素敵だわ。私達は参道をずっと登っていく。
「高くてキレイね」
「そうだね」
私達は山頂近くまで登って車を止めた。明良が私を見つめる。私も明良を見つめて目を瞑る。唇を軽く交わす。
「外に出て夜景を見ようか。もっとキレイに見えるはずだよ」
「うん、そうね」
私は明良に連れられて夜景を見ている。ホントにキレイだわ。さっきまでの館の出来事が嘘のようだわ。その時、私の後頭部に電流が走った。