紅館番外編〜大公爵結婚騒動〜-8
お互い裸のまま抱き締め合いながらベットで眠りにつく。
『…紅様。』
『ん? なんだい?』
『お話ってなんですか?』
『あぁ…』
そういえば、話すところで中断したのだった。
『明日の夜、王宮で舞踏会があるんだ。
シャナにも一緒に来てもらいたい。 王様達が私の恋人を見たいそうだ。』
ガバッとシャナが起き上がった。
『わ、私、踊りを知りません! あぁ、作法も!!』
アルネの予想通りだった。
『大丈夫、明日アルネが教えてくれるから。
さ、もう寝よう…』
片手でシャナを抱き寄せて目を閉じる。 シャナの髪の香りがとても心地よくて、グッスリ眠れそうだ。
『しかし…ゼロに聴かれたことで…ずいぶんと大変だったね………』
『えっ??』
『ん??』
つい閉じた目を開けてしまった。 シャナは不思議そうな表情で私を見ている。
『ゼロさんがどうかしました?』
『あれ? シャナ、エレン姫のこと誰から聞いたの?』
『私…紅様とアルネさんが話していたのを聞いたのです。 ちょうど、部屋の掃除をしようとしたら、お二人が部屋で話していたのを。』
………タラリと汗が頬を伝った。
どうやらゼロはまったく関係無かったようだ。
明日謝っておこう…
『ほら! ここはステップ・ターン・ステップ! もっと背筋伸ばして!』
『はい…』
次の日の朝からアルネが食堂でシャナにダンスを教えていた。
『ワン・ツー、ワン・ツー…そう、手をピンと伸ばしてね…上手よ。』
『シャナちゃん頑張って〜〜〜♪』
そんな二人の様子を私はゼロを膝に乗せながら眺めていた。
『ご主人たま、シャナちゃん綺麗だね………♪』
『あぁ……』
片手でゼロの頭を撫でるが、目は踊っているシャナに釘付けだ。
『ターン♪ ターン♪ ターン♪ そう、上手上手。
次は相手の肩に手を乗せて…』
しかし、踊るシャナも素敵だが、教えているアルネにも驚かされる。
いつの間にダンスを覚えたのだろうか? 100年の間パートナーであったアルネだが、まだ私も知らない魅力がたくさんある。
シャナも素晴らしい女性だが、アルネもまた素晴らしい女性なのだ。
『私は幸せ者だね…』
『ご主人たま…?』
ゼロが私の顔を覗きこむ。
『ゼロも、幸せかい?』
『………うん! とっても幸せだよ、ご主人たま♪』
ぎゅっと抱きついてくるゼロ。
『紅様〜』
アルネが私を呼んでいる。 抱きついているゼロを軽く抱き締めて膝から降ろし、アルネの方へと歩いていった。
『レッスンは終りましたよ。 一応全体の流れを確認の意味を込めて、一度踊ってみてください。
私はシャナさんのドレスを選んできますから。』
足早にアルネが出ていくと、どこからかゼロがバイオリンを持ち出してきた。
『〜♪ 一曲いかが? 恋人さん♪』
ゼロのバイオリンが優雅な音色を奏でる。
『…踊ってくれるかな? シャナ。』
キリッと格好つけて手をさしのべるとシャナは微笑みながらその手をとった。
『もちろんですわ、大公爵様。 フフ♪』
二人で踊り始めた…シャナは最初こそ戸惑って、ぎこちない感じがしたが、次第に慣れ、食堂にはバイオリンの音色と規則正しいステップの音だけになった…