『秘館物語』第2話「訪問者」-27
「……です」
「?」
「も、もう、だめ、なんです! お願いです、もう……!」
「ん、そうかそうか」
直接的な言葉はなかったが、充分である。これ以上は、野暮と言うものだろう。それに、自分自身も限界が近い。
「ワイも、そろそろあかん。双海、最後まで、いくで……」
「は、はい……お願い、します……!」
兵太は、緩めていた腰の動きを一旦止めて、体勢を整えてから、頃を見て一気に打ち上げた。
ぐちゅっ!
「ひいぁああぁぁぁぁぁ!」
最も深いところまで、一気に貫かれた双海は、更に背を反らし、身体の中で暴れまわっている快楽の強さを見せた。
ぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅ、ぬちゅるっ、ぬちゅぬちゅぬちゅっ!
「あっ、ひあっ、ああっ、んあっ、あっ、あぅっ、ああっ、ああぁああぁぁぁあぁぁ!」
「う、うおっ、おおっ…!」
猛然と腰をぶつけ合い、濡れに濡れた部分を擦り付けあい、淫蜜を零しあった。お互いにストッパーを外した二人は、完全に獣と化していた。
「あ、あうっ、ああっ、ひぅっ、くあっ、ああぁあぁぁぁぁ!」
口の端から糸を引かせつつ、双海がとにかく喘ぐ。その声を絞り出すために、兵太は必死に腰を揺する。
「むぅっ」
頂に到達するまで、何の遠慮もしないつりだったから、再び腰の辺りに集まってきた射精感の高まりに対しても、彼は抑えの意識を放り出していた。
「あっ、あっ……も、もう……!」
だが今回は、先に双海の方が限界を迎えた。ぶるぶる、と腰の辺りが震えたかと思うと、その震えは一気に彼女の全身へと伝播したのである。
ぶるっ、ぶるぶるっ、ぶるぶるぶるぶるっ!
「や、やぁっ……あ、あっ……」
それでも尚、抗いの様子を見せる双海。
「ええんや、双海。ワイも、すぐに追いつくさかい」
兵太は、最後の挿入とばかりに腰を深く沈めた後、高まってきた射精感が臨界点に到達するのを見計らって、胎内の最深部まで己の肉剣を一気に突き立てた。
「ああぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!」
これまでの中で、最も高いトーンと間隔を持って、双海が喉をそらして吼えた。絶頂に達したのである。
「う、おっ、くぅっ!」
激しい全身の硬直は、その胎内でも同様である。もともと寸前まで来ていたこともあり、その締め付けを受けた瞬間、兵太はためらう余地もなく第二射を発していた。
どぴゅるっ、どくどくどくっ、どぷどぷどぷっ!
「あ、あつい! あっ、ああぁぁああぁぁぁぁ!」
絶頂の余韻に浸る間もなく、膨大な熱エネルギーを再び胎内で浴びた双海は、そのまま、二度目のエクスタシーに到達した。
「あ、あっ、ああぁ、あ……」
兵太に後ろから抱え挙げられた体勢のまま、ぶるぶると双海の身体は震えつづけている。だから、彼には見えていないのだが、快楽に沈みきったその顔は、普段の彼女からは想像も出来ないほど妖艶な色合いを持っていた。
「くっ、うっ、うぅっ」
どく、どく、と二射目とは思えないほど濃厚で大量の精を注ぎ込む。当然、彼女の許容分を超える量となったそれは、繋がっている個所の隙間から滲み溢れてきた。
「あ……う……あ……」
強烈な、ダブル・エクスタシーの余韻に双海は言葉を失っている。全身からも力が抜けてしまったようで、兵太の腕にはその重みが全て掛かってきた。もっとも、容易に抱え挙げられるほど、兵太にとって彼女の体重は問題にならないのだが。