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『秘館物語』
【SM 官能小説】

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『秘館物語』第2話「訪問者」-22


「あぁ……は……ぁ……」
 その唇から漏れ聞こえる吐息にも、それが窺える。まるで、何かようやくひとつの本懐を果たしているかのような、“悦び”が感じ取れるのだ。
 軽薄を装っているが、兵太には優れた洞察力がある。そして、勘も鋭い。

 シャアアァァァァァ……

「ん……はぁ……」
 だから、目の前で小水の音を響かせている双海の様子が、普段とは違っていることを見抜いていた。
「ん……んふ……んぅ……」
 なにしろ、生理現象の解放という体の弛緩が生み出すものにしては、吐息には妙な艶っぽさが含まれている。

 ジョロッ…… ジョロッ…… ショロロッ……

「………」
 気が付けば、迸りの音はもう消え入りそうになっていた。
(ワイ……)
 自分でも驚くほどに、この状況をすんなりと受け入れて、やけに冷静に彼女の放尿姿を見つづけているものだと思う。
 ただ、心臓の動悸はやはり鼓動が早く、昂奮している自己が意識できる。
(もう、踏み込んどったのかもしれんな…)
 双海が始めて目の前で粗相をしたときに、その種を植えられたのだとすれば、それはいつしか芽を出して、そして大きく育っていたようだ。
「あ、あの……」
「終わったんか?」
「はい……」
 伏し目がちにこちらを振り向く双海の仕草にも、兵太のカオスは刺激を受ける。
「なら、綺麗にせんとな」
「え…?」
 兵太は、テーブルに置かれていたウェットティッシュを数枚抜き取る。そして、壺に跨っているままの双海の背中に近づくと、そのまま脇から手を廻して、迸りの音を響かせていた場所にそれを持っていった。
「あっ、へ、兵太さんっ……!」
「そのままや。双海、動いたらあかんよ」

 ぬるりっ…

「んっ……! くぅっ……!」
 溝を、ウェットティッシュ越しに指でなぞっていく。その部分が、小水で濡れていることなど気にすることもなく、兵太は何度も指を上下させた。
「やっ……だ、だめっ……汚れ、てる……」
「ええよ。綺麗に、拭いたるから」
「あ、あっ……んんっ……くっ……」
 明らかに、小水の汚れを拭い取る作業とは違う指使いである。
「はぁ……はぁ……」
「なんか、ヌルヌルしとるな」
「い、いやぁっ……」
 兵太の指先を覆うティッシュの中心部には、黄色い染みと共に、光沢のある粘り気もべっとりと張り付いていた。
「気持ち、よかったんやろ?」
「………」
 双海は、顔中が紅色にして、ひどく恥じらっている様子を見せながらも、兵太の掛ける言葉には素直に小さく頷いた。
「ワイも、なんやらえらい昂奮したわ」
 兵太は、ウェットティッシュを屑篭に投げ入れると(それは外れて、中に入らなかったが)、もう一度その指を双海の秘裂に這わせた。
「あっ……んんっ……んっ……!」
 そのまま指を蠢かせと、たちまちにして、拭ったはずの粘り気が指にまとわりついてきた。
「仰山、だしよったな…」
 肩越しに除き見た壺の中には、その半分ぐらいまで、尿が溜まっている。見るも鮮やかな淡い金色の水面が、そこにはあった。


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