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『秘館物語』
【SM 官能小説】

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『秘館物語』第2話「訪問者」-21


 先にも触れたが、彼女は“頻尿”の傾向が強い。夜に目が覚めるときは、大抵、我慢の限界が近いものになっており、特にこの屋敷では、そういう状況になったときの、トイレまでの距離が双海にとってはかなり絶望的なものだった。
「だから…」
 この壺を持って部屋の外に出て、その場で致した後、それを改めて処理することで粗相を免れてきたというのだ。
 本来なら、その処理も望や碧の仕事になるわけだが…。さすがにそれは憚れたので、双海は自らそれを行っていた。
(言われてみれば、“おまる”にも似とるか。…というか、そのまんま、か?)
 よくよく見れば、壺は楕円の形をしている。薄紅の花の模様が、その表面にふんだんに装飾がなければ、想像次第では一目見ただけでそれだと感づくような形状をしていた。
「………」
 双海の震えが、強くなってきた。閉じ合わせた太股を摺り寄せあい、その場で細かく足踏みもしている。遠慮が薄くなったその動きが、近づいている限界を強く訴えていた。
「あ、あの……」
 “辛抱堪らず”という具合に、すがるような視線も彼女は投げかけてくる。
「あ、あぁ。…すまんかったな」
 この壺を巡るトリビアを、悠長に論じていられる状況ではない。
「う、うほん」
 わざとらしい咳払いをする兵太。自分の中にある緊張を、解きほぐす意図もそこにある。
「ほな、双海…」
 部屋の隅に置かれていた楕円の壺を手に取ると、兵太は双海の足元にそれを置いた。そして自分は、双海にとって斜め後ろとなる位置にポジションを取った。彼女の放尿する姿をはっきりと見ることが出来る正面に立たなかったのは、遠慮と戸惑いの気持ちがあったからである。
 それでも、双海の後ろ姿を見つめる彼の両眼は、興奮状態を示すようにうっすらと充血をしていた。
「………」
 そんな兵太の視線を背中に浴びながら、双海はワンピースの裾を少したくし上げ、その中に両手を入れて、ショーツを引き下ろした。股の部分が濡れて、透き通っているそれを、双海は完全に脱いでしまう。
 そして、あらためて裾を腰の辺りまで持ち上げ、壺を跨いだ。
「……んっ……くっ……」
 そのまま膝を折り曲げて、和式で用を足す格好を取った瞬間、
「あ……あぁ……」
 溢れそうになっていた尿意は、そのまま双海の股間から飛沫を交えて、金色の筋を生み出したのであった。

 シャアァァァァァァ……

「………」
 露になった彼女の白い臀部を凝視している兵太。僅かに見える壺との空隙には、小水の迸りがはっきりと見える。

 シャァッ、シャアァァァァァ……

 壺の底を叩く、激しい水流。それが噴き出てくる音は、想像していたよりも大きなものだった。なるほど、世の女性たちが、水を流しながら用を足すのも道理だと思う。
(なんやら、気持ちよさそうやな……)
 部屋の中で尿瓶代わりの壺を使い、配偶者に見られながら用を足す…。明らかに、尋常と言える状況ではない。しかし、双海の背中から醸し出される雰囲気には、心地よさそうなオーラが見えていた。


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