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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第10話-26

「プレイボール!」
 所定の投球練習が終わり、岡崎が打席に入ったことで、試合は始まった。
 仁仙大学の先発投手は、初戦で対戦した城南第二大学の先発投手と似通ったところのある、制球型の右腕投手だった。しかし、ややスリークォーター気味に、腕の角度が横手になっている点は、違っている。
「ボール!」
 そして、初球がアウトコースのボール球であるという点でも、初戦とは違う様を見せていた。おそらく相手バッテリーは、岡崎が初球先頭打者本塁打を放っていることに、相当な意識を向けていたのだろう。
 ボール球から入る、と言うことは、それだけ球数を費やしても構わないと、割り切っているに違いない。
「ストライク!」
 二球目も外角の際どいところだった。球種はシュートだったのだろうが、ストライクゾーンをわずかに掠めていたらしく、審判の手が高々と挙がっていた。
「ボール!!」
「ボール!!!」
「ファウル!」
 今まで投じられた、全てのボールが外角である。それも、ボールになっても構わないと言わんばかりの、際どいコースばかりである。
「ファウル!」
 そろそろ内に来るか、と、四分六で待ち構えていた岡崎は、それでもやはり外側に投じられたシュートを、辛うじてカットした。見逃せばギリギリのところだったかもしれないが、ストライクの可能性が少しでもある以上は、手を出す必要があった。
「ファウル!」
 フルカウントから、三球ファウルが続いた。それでも、徹底して外角にボールを集めているバッテリーである。ある意味で、ブレが全くない。
「………」

 キンッ…。

「くっ」
 根負けしたのは、岡崎のほうだった。外角に逃げるシュートを待ちきれず、ヘッドに引っ掛けてしまい、サードゴロに倒れてしまった。
「ドンマイだぜ、岡崎。いきなり相手に、たっぷり放らせたんだ」
「だと、いいがな」
 球数を投げさせる、という意味では、1番としての役割は果たしたと言えるが、岡崎は、なんとなく釈然としないものを感じていた。
「アウト!!」
 続く栄村も、徹底的に外角を攻められ、こちらもフルカウントまで持ち込みはしたものの、セカンドフライに打ち取られていた。
「一球も内側に来なかった…」
「なら、誘いをかけてみるか」
 栄村の耳打ちを受けて、雄太は心持ちホームベース寄りに立つ。外角を狙っている、とあからさまな態度を見せて、どうバッテリーが反応するか、様子を伺ってみることにしたのだ。
「ボール!」
 まるでそれを意に介さないかのように、シュートが外側に投じられた。しかも、振られるかもしれないことを予測していたかのように、それは、ストライクゾーンを大きく外れていた。
(こいつら、端から“継投”を考えてやがるな)
 ボール球を多用する配球は、必然的に球数が多くなる。相手投手は、それほどスタミナがあるようには思えなかったから、おそらく完投することは初めから意識に入れていないということが、投手出身である雄太にはよくわかった。
(だがよ。前の試合では、完封で勝っていた…)
 と、いうことは、後に控える投手も、決して力がないわけではないのだろう。

 キンッ…。

「ちっ」
 芯を食い損ねたことは、当たった感触でよくわかった。雄太は、これまた徹底的に投じられた外角へのシュートに対応しきれず、弱い当たりのショートライナーに倒れてしまった。
「アウト!!! チェンジ!」
 それでも、雄太もまた、フルカウントまで持ち込むことは出来た。このイニングだけで、先発の関根投手は、実に20球近くも球数を費やしたことになる。
(しかし、骨の折れる試合になりそうだな)
 優勝候補と目されながら、非常に慎重な試合運びを初回から見せてきた仁仙大学。それを打ち崩すには、相当な我慢比べをしなければならないだろうと、雄太はこの試合に、重苦しい雰囲気を感じていた。


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