熱い吐息U-1
片手で肩を抱かれ、もう片方の手で頬を撫でられる。唇の合間からゼンの舌が入り込む。
深いキスの合間にゼンの甘い声が響く。
「愛してる葵・・・、お前が欲しくてたまらない・・・っ」
時折苦しそうにゼンが目元を細める。荒々しい息遣いに比例してゼンのキスが激しくなっていく。
「ゼン様・・・っ」
激しく舌を吸われ、息苦しさに葵が顔を背けると体が宙に浮いた。
驚いて葵が体を硬直させていると、ゼンが横抱きにして葵の体をベッドへと運ぶ。
軽々と抱き上げたゼンの腕はとても逞しく、葵の鼓動は高く跳ね上がった。
優しくベッドに仰向けにされると、ゼンが覆いかぶさってきた。体重をかけられ、葵は身動きがとれない。
ぎゅっとゼンに組み敷かれたまま、耳元で熱い吐息とともに愛を囁かれる。
「葵・・・愛してる・・・っ・・・」
切羽詰まったようなゼンの顔が近づいて・・・角度を変えながら何度も深く舌が入り込み葵の舌を絡めていく。
シーツに縫い合わされるようにゼンの手が葵の手の自由を奪う。ゼンの甘い唇に意識が朦朧としてきた葵だったが・・・
―――ドーンッッッ!!
静かな王宮に何かが破壊されたような轟音と振動が鳴り響いた。
「何・・・?」
我に返った葵がゼンに支えられて姿勢を起こした。
「・・・・」
何かを感じとったようにゼンの目が冷たく細められる。
葵が窓から外を見ると・・・
噴水が粉々に崩れ、その傍には聖刀を手にした大和が立っていた。ここからもわかる程の激しい殺気が漂っている。
「大和・・・一体どうして・・・」
葵は自室を出て中庭へと向かった。
すでに仙水と蒼牙の姿があり、葵は大和へ急いで駆け寄った。
「大和・・・っ、怪我はありませんか?
一体何が・・・」
「・・・・」
怒りに震えた手を強く握りしめ、大和は無言のまま葵に背を向けた。その手には血がにじんでいたが、痛みも感じないほど大和の心は荒れていた・・・。
「大和・・・どうして・・・」
眉を下げた葵は、去って行く大和の背中を寂しく見つめていた。
しゃがんで砕かれた噴水の欠片を手にすると、もうひとつの影が隣に立った。