再会-5
「そもそも、商品をこっちが預かる時に伝票内容をお互いにちゃんと確認すればこんなことにはならないっすよ。他のフロアではみんなそうしてる。でもあんたは、ずっと俺を避けてるだろ!?」
俺は机を押しのけてぐいっと麻理のほうへと回り込んだ。
「べ、別に避けてなんかないわ」
「なんか俺と知り合いだとマズいことでもあるわけ?」
「だからそれは……ひ……人違いだって言ってるでしょう」
麻理は急に弱々しい口調になり、俺から視線をそらす。
その怯えた小動物のような表情が、俺の加虐心に一気に火を放った。
「とぼけんなよ」
俺はさらに麻理との距離をつめ、壁際にまで追い詰めた。
10年前は俺のほうがチビだったのに、今では麻理の身体のほうが小さいという事実に奇妙な興奮をおぼえる。
あの頃、一方的に憧れ恋い焦がれていたあの女神のような麻理を、今の俺はどうにでも出来る───そう思うだけで下半身が急激に熱くなるのがわかった。
「よく一緒にブランコに乗っただろ?あの、神社、のそばの公園で」
「し、知らない……どいて……離れて……っ」
一番触れてほしくないキーワードを俺の口から出され、麻理はすっかり落ち着きを失っていた。
オロオロと俺から顔を背けようとする麻理の姿は、哀れなほど滑稽に見える。
俺は、獲物をいたぶる蛇のように、麻理をじわじわと追い詰めていった。
「───あの神社、あんたにとっては特別な場所だもんなぁ?」
「い……言ってる意味が……わからないわ」
「ふうん。そこまで言うなら思い出させてやろうか?あんたが、あの神社の社の中で、何をされたか」
「……!?」
俺の言葉に、麻理はバッと弾かれたように顔を上げた。
「おや?思い出したのかい?」
「……な……何を……」
麻理の顔からはいっぺんに血の気がひき、目が皿のように大きく見開かれている。
「だから────あんたが、あそこで、三人組のチンピラにレイプされたってことだよ」
俺は麻理にショックを与えるために、敢えて具体的な言い方をした。
「あ……あなた……どうして………それを……」
俺があの出来事を知っているという事実に、麻理は相当なショックを受けたようだった。
俺は呆然としている麻理の肩をゆっくりとつかみ、壁に押し付けた。
「俺、あの時ずっと見てたんだよね。あんたが、三人の男たちにヤられちゃうとこ」
「……嘘……嘘よ……」
「嘘なもんか。三人の男にいっぺんにいじくりまわされてさ、バイブまで突っ込まれてヒイヒイ喜んでただろ」
「や……やめて……」
「終いには潮までふいちゃって、凄かったよなぁ。俺コーフンしちゃったよ。なぁ?────麻、理、姉ちゃん」
「……や……やめてぇぇっ!」
俺は逃げ出そうとする麻理の身体を素早く抱きしめ、尻と背中を撫で回しながら、無理矢理唇を重ねた。
「……やっ……んっ……」
初恋の相手であるはずなのに、愛おしいとか嬉しいという感情はちっとも湧かなかった。
ただひたすらに、この取り澄ました淫乱女の本性を暴いてやりたいという暴力的な欲望が俺の中に渦巻いていた。
必死で閉じようとする唇を無理矢理こじ開け、俺の唾液を流し込む。
麻理の身体に俺のあらゆる体液を流し込んで内側から汚染してやりたいという異常な衝動が俺を支配していた。
「うぐぅっ……んっ……」
呻き声を漏らしながら苦痛に歪む麻理の表情がますます俺を煽る。
「気取ってねぇで淫乱な本性見せろよ」
俺は麻理の制服に手をかけ、左右にビリッと引き裂いた。
ベストとブラウスのボタンが一気に弾け飛び、麻理の白い肌が露わになる。
「いやっ!」
麻理は短い悲鳴をあげて俺から逃れようと身をよじった。
「おっと逃げんなよ。仲良くしようぜ、麻理姉ちゃん」
「やっ……やめてっ……人を呼よぶわ」
胸元をかきあわせながら麻理が俺を睨みつける。
「呼べよ。バラされてもいいならな」
「……な……なんですって……」
「早く呼べって。俺には失うものなんか何もないからな。なんなら集まってきた奴らに、あの時の写真を見せてやってもいいんだぜ」
写真を持っているというのはハッタリだったが、あの時たくさん撮られた写真を一枚ぐらい俺が持っていても不思議ではないと思ったのだろう。
麻理はまんまとこの嘘にひっかかった。
「そんな……ひどい……」
麻理の身体から一気に力が抜けた。
つい今しがたまで俺を睨みつけていた目には、完全に絶望の色が浮かんでいる。
「あなた────最低な男になっちゃったのね」
麻理は憐れむような悲しげな目で俺を見た。