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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第7話-9

「タイム!」
 エレナが手を挙げた。そしてそのままベンチから腰を上げると、雄太が立つマウンドへと足を進めた。
 それが意図するものは、ただひとつである。
「GOOD JOB、キャプテン。よく、がんばりました」
「………」
「勝つためのjudgeを、させていただきますね」
「…Sir」
 雄太は手にしていたボールをエレナに渡した。
 エレナはそれを右手で受け取り、そのまま大和の目の前にかざした。
「ヤマト」
「………」
 タイムがかかった時点で、想像もしていたし、覚悟もしていた。
「キャプテンのspiritsを、ひきつぐのはyouしかいません」
「はい」
 大和は、エレナがかざしたボールを、グラブではなく直接右手で受け取った。
「投手交代!」
 三塁からマウンドに上がった大和。マウンドを降りた雄太は、一度ベンチへ戻ってから自前のファーストミットを取り出し、一塁の守備に着く。入れ替わるようにして、グラブを内野手用のそれに持ち替えた若狭が、三塁の守備位置に入った。
「大和、頼むな」
 雄太の声はいつになく沈んだ様子がある。考えてみれば、点を許した後での降板によって、彼からマウンドをひきつぐのは初めてだった。
 ブロック戦では全く逆の立場であった。試合の途中でスタミナ切れを起こし、後のマウンドを雄太に引き継いでもらった。
 だから大和には、雄太の今の気持ちが痛いほどよくわかった。
「任せてください」
 大和は、雄太に力強く言葉を返す。その表情には、決意に満ちたようなものにも見えた。
「大和…」
 最後までマウンドに残っていたのは、桜子だった。打ち合わせが必要だったからだ。
「桜子、リードは任せる」
「う、うん」
「僕は、僕のできることに全力を注ぐよ」
「わかった」
 灯火を宿す彼の瞳を見れば、今の状況に飲まれていないことははっきりとわかった。公式戦で彼がマウンドに立つのはこれが二度目だが、あの時とは比べようもないくらい、今の大和は期するものを秘めているように見えた。
「大和は、投げることだけ考えてね」
 だから桜子も、大和の投げる全てを受け止める覚悟を決めた。
「ありがとう、桜子」
 その姿勢が大和には嬉しく、そして、頼もしかった。
「プレイ!」
 選手交代に伴う試合の中断が終わる。
「………」
 公式戦の中で、一塁に走者を残した状況でのリリーフ登板は初めてだが、大和はそれを全くプレッシャーに感じていなかった。
 牽制の視線を投げかけつつ、セットポジションの構えを取る。そして、視線が相手打者の方向を向いたとき…、
 大和の全身には、凄まじいまでの気迫が漲った。
「!」
 足が上がる。
 走者がいるので、クイックモーションによる投球となる。それでも、力強く踏み込んだ左足が、マウンドの土を勢いよく削り取った。
 足元から起こる回転運動が、全身を通してうねりとなり、まるで鞭のようにしなった右腕の振りから、勢いよくボールが投げ放たれる。
 かつて大和を苦しめた右腕の違和感。それは、全く顔を出さなかった。

 ゴォッ!

「えっ」

 ズバァン!!

「ひっ!」
 内角を貫くストレートに、相手打者はのけぞっていた。別に当たりそうもない球にも関わらず、明らかな恐怖をその顔に貼り付けて…。
「「「な、なんだぁ!?」」」
 東稜大のベンチが、俄かにざわめいた。ブロック戦のときとは全く違うその球威に、誰もが驚き戦いていた。
「ス、ストライク!」
 審判でさえ、あまりの球威に威圧されたか、少し間の外れたコールになっていた。


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