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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第7話-10

(きた……すごいのが……!)
 一番の驚きを抱いているのは、その大和の球を受けた桜子だ。これまでも、大和の投球練習を何度も受け止めてきたが、手のひらに感じる重圧は、それまでにない凄まじいものだった。
(今までと全然違う…。これが、大和の本当のストレート…)
 何故か胸の高鳴りが、止まらなくなった。魅了させられていたのだ。
(すごい……すごい、ドキドキする……)
 打ち抜かれたようなしびれを発する左手に、心地よさを感じる桜子であった。

 ズバァァン!!

「ストライク!!」

 ズバァァン!!!

「ストライク!!! バッターアウト!!」
 相手打者は、その球威に呑まれたまま、ただの一度もバットを振ることができず見逃しの三振に倒れ、
「話に聞いてたのと全然違う。なんなんだよ、あれ…」
 と、呆然とした呟きを残して、打席を去っていった。
「大和、ナイスピッチ!」
 嬉々とした桜子の力強い返球を、大和はしっかり受け止める。静かに漲らせている気迫もそのままに、再びピッチャーズプレートに足をかける。
 と、見せて、
「!」
 牽制球を一塁に素早く放った。
「わっ!?」
 大和の剛速球に気を取られていたのか、走者の帰塁はワンテンポ遅れたものになった。
「アウト!!!」
 手からベースへの帰塁を試みたが、それを雄太のタッチが阻んでいた。
「チェンジ!」
 これで3つ目のアウトを奪ったことになり、1点を失ったものの同点に追いつかれることなく回は終了した。東稜大に傾きかけた流れを、大和はたったの三球と牽制の一球で押し留めたのである。
「ナイス牽制だぜ、大和」
「キャプテンこそ」
 ノーサインによる牽制だったにも関わらず、一塁手の雄太は、相手走者の緩慢な動きの裏を突く俊敏な守備をしてみせた。
「なんとなく、来る気がしたんだ」
 お互いが投手であるからこそ、引き合うような呼吸のマッチングが発生したのだ。その結果が、必殺の牽制になったのである。
「サンキューな、大和」
 グラブでもう一度タッチを交わし合い、連れ立ってベンチに戻る。自分が作ってしまったピンチを、後に託した投手が抑えてくれた安堵と喜びは、それを経験したものにしか共有できないだろう。
「エクセレント!」
 二人をベンチで出迎えたエレナの顔が、喜色に輝いていたのは言うまでもない。

 それからの試合は、大和の独壇場といってよかった。
「ストライク!!! バッターアウト!」
「ストライク!!! バッターアウト!!」
「ストライク!!! バッターアウト!!!」
 8回の裏、上位に廻った東稜大の打線はそれでも、大和の剛速球に対してバットに掠めることさえできず、三者ともが三球三振に終わった。
(誰のバットにも、掠らせたりはしない)
 傲慢ではなく、大和は本気でそのつもりだった。
 序盤にあれだけ動きのあった試合だから、勝利を引き寄せるためには圧倒的な力でねじ伏せることが必要だと感じていた。
 だから、多少のコントロールは度外視して、球威に意識の全てを注ぐピッチングを彼はやっていた。
(大和)
 桜子も、大和にコースを要求しなかった。構えはそのまま真ん中にしているが、球威のあるストレートが自然とそれぞれのコースに散ってくる。
(投げたい球を投げて! あたしは、全部それを捕るからっ!!)
 大和が投げるままの全てを、桜子は受け止めていたのだ。
 だから二人は、サインを交わしていない。その必要がないくらいに、呼吸と律動が同調して相和していた。
(ノーサインとはよ)
 雄太は、大和と桜子のバッテリーに畏怖のようなものを感じていた。それは、遊撃手の岡崎も同様だった。
 9回の裏、東稜大学の最後のイニング。だが、打席に入る相手の打者は、完全におびえきった表情をしていた。
「ストライク!」
 そして初球を見ただけで、こんな剛速球を打てるわけがないという諦めを抱いた。
「ストライク!!! バッターアウト!」
 そのまま先頭打者が見逃しの三振に倒れた。
 この時点で、試合の勝敗は完全に決していた。


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