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僕の魔王討伐史
【コメディ 官能小説】

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魔王討伐史-3

「……凄く広いです」
 本当にそれ以外の感想が出ないくらいに外の景色は広い。
「勇ちゃんの初めてをわたし達が奪っちゃったわけか」
「…………」
 分からない。魔法使いさんが何を言っているのか僕には分からない!
「ちょっと〜何でわたしの言葉を無視するの? 戦士や僧侶の言葉にはきちんと返事をし
たのに、何でわたしのは無視するかな〜?」
 ズズイっと魔法使いさんが顔を近づけてくる。
「あの、えっと……あぅ……」
 女の人にこんなにも顔を近づけられたことがないから、もの凄く緊張する。変な言動ば
かりしているけど、魔法使いさんはかなりの美人だから。そんな美人の顔がこんな近くにあると……
「あり? 顔を真っ赤にして俯いちゃった」
「ふふ……っ、きっと照れているのでしょう。ほんと、可愛いですね」
「確かにこれは保護欲をそそられるな」
「あ、あまり僕をからかわないで下さい! 僕はこれでも勇者なんですよ!」
 実際は勇者の血を引いているだけなんだけど、それでも見栄を張らずにはいられない。
 勇者といえば、仲間を引き連れていくリーダーのようなものだ。そのリーダーが仲間に
からかわれるなんてあってはならない。リーダーとは皆に尊敬をされ敬われないといけないんだ。
「そうだな。お前は勇者だな♪」
「ええ。あなた様は勇者様ですよ♪」
「うんうん、勇ちゃんはちゃんと勇者だよ〜♪」
 撫で撫でと僕の頭を撫でる三人。うぐ……っ、これ絶対勇者として扱われてないよ。
 ただの子供としてしか扱われていないじゃないか。
 なんとか威厳を示したいんだけど――――ぁっ! そうだ、魔物を僕が率先して倒せば
いいんだ。そうすればきっと三人も僕を子供扱いなんてしないだろう。
 そうと決まれば魔物を退治したいんだけど……
「――お、早速魔物の登場だな。このパーティーでの初めての戦いだな」
「ふふん。腕が鳴るね〜」
「補助は任せて下さい」
 魔物を見つけて意気揚々とテンションをあげていく三人。ぼ、僕も魔物と戦う準備をしないと――
『ぐるるるるっ!』
「う……っ」
 こ、怖い……魔物ってこんなにも怖い姿をしてるの!? む、無理だよ。この魔物かな
り強いんでしょ? こんな強そうな魔物と戦うなんて……
 で、でもここで戦わないと勇者としての威厳が――リーダーの尊厳が……
 うぅ……っ、い、いけるはず! ここには強い魔物なんていないはずなんだ! それに
僕は一人じゃないんだ。だから死ぬことはないんだ!
「う、うわぁぁぁぁぁっ!」
 大きな声をあげながら僕は魔物に突貫をして――
「は〜い、勇ちゃんはこっちで大人しくしてようね〜」
「え……?」
 魔物に突貫をしようとしたら急に魔法使いさんに止められてしまった。
「あ、あの――ぼ、僕も一緒に」
「勇者はそこで大人しくしてな。コイツはあたし達がヤルから」
「で、でも……」
「勇者様。怪我をしてはいけませんので、私の後ろに隠れててくださいね」
 あれよあれよと、前線から追いやられていく。戦う覚悟を決めたというのに、何で皆僕
の邪魔をするのだろうか? これでは一緒にパーティーを組んでいる意味が……
 僧侶さんや魔法使いさんのように補助や攻撃魔法が使えるのなら、後ろに隠れる意味が
あるけど今の僕にはそんな特技はない。だから前線で戦うしか出来ないのに。
「あの……僧侶さん、何で僕が此処に――」
「それはですね。勇者様に怪我をして欲しくないからですよ」
「ですが――」
「こんな奴、あたし達で十分だ。それに勇者には戦い以外でしてもらわないといけないこ
とがあるからな!」
「そうだよ〜勇ちゃんには戦い以外で頑張ってもらわないといけないんだよね〜」
「戦い以外で、ですか……?」
 一体、何があるというのだろうか? 特に勇者という名で出来ることなんて限られてい
ると思うけど……と、いうより基本的には何も出来ないよね? それなのに三人は僕に何
をさせようとしているのだろうか?
「ま、全ては後でのお楽しみって奴だ!」
「ええ。ですので勇者様はここで、ノンビリとしていて下さい」
「うんうん、大将はドシッと構えているもんだよ♪」
「……あ、はい」
 初めての僕の戦いはまさか後ろで見学をするという形になってしまった。それにしても
三人とも本当に強い。相手がそこまで強くないというのもあるんだろうけど、それでも傷
一つ負わずに相手を倒していっている。
 本当に僕と一緒に旅をさせるのが申し訳ないくらいに強い。
「――しっ、やっぱりただの雑魚だったな」
「そだね〜苦戦らしい苦戦はしなかったね」
「勇者様も無傷ですし、余裕の勝利ですね」
 三人とも楽勝だったと口を揃えている。今回の戦闘は彼女達には物足りない戦闘だった
のかもしれない。まぁ、僕としてはそういう戦闘がずっと続いてくれた方がありがたいんだけどね。
「み、皆さんお疲れ様でした」
「あたし達の戦い、きちんと見てくれたか?」
「はい。凄かったです。皆さん本当に強くて――」
「まぁな。あたし達もそれなりに鍛えているからな」
「そうなんですね。えっと、それで一つ聞きたいんですけど、戦闘中に言っていた僕の役
割って一体何なんですか? 全然思いつかないんですけど」


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