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僕の魔王討伐史
【コメディ 官能小説】

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魔王討伐史-2

「そう、人間素直なのが一番よ。それじゃこのお金をあげるから旅に出なさい。そしてお
父さんのように世界を救って立派な人間になるのよ!」
「あ、うん……」
 お母さんから渡されたお金。その額は――安い宿屋でも一週間持つかどうかぐらいの額だった。
「え……これ、だけ?」
「ええ。そうよ。そのお金を持って頑張るのよ」
「いや、このお金で装備とか買ったら宿に泊まることも出来ないよね!?」
 てか、これだと満足に装備も買えないと思う。
「お金が足りないのなら外で魔物を倒しなさい。そうすれば宿に泊まることも出来るでしょ?」
「いや、まぁ……そうかもしれないけど」
「それに魔物を倒せば強くなれるし、一石二鳥ね♪」
「それは何だか激しく違うと思うけど……はぁ、これで行くしかないんだよね?」
「ええ。頑張っていくのよ。お父さんもきっと草葉の陰で応援してるわ」
「お父さん、まだ死んでないから!」
 普通に生きてるからね! 何を勝手に自分の夫を殺してるんだよ!?
「はいはい、御託はいいからさっさと行きなさい」
「……分かったよ」
 まるで厄介な客でも追い返すかのような言葉。もしかしてお母さん、僕はあなたにとっ
て必要のない子供なのでしょうか?
 そんな質問をしたかったけど、答えを聞くのが恐ろしかったので聞かないでおこう。
 旅に出る前にテンションを下げたくないもんね。この先色々と大変なんだから。

「――で、まずは手始めに酒場に来たわけなんだけど……」
 どうやって仲間を集めればいいのだろうか? 当たり前のようにこんな経験はないし、
仲間を集めるための手順が全然分からないよ。
 迷子の子供のように酒場でウロウロとしていると――
「あら? さっきから何もせずにオロオロとしているけど、酒場に何の用かしら?」
 酒場のお姉さんから僕に話しかけてきてくれた。よ、よし、この人に旅の仲間を探して
るけど、どうしたらいいのかを聞こう。きっとこのお姉さんなら答えてくれるはずだ。
「あ、あの……僕、王様に魔王の討伐を命令されて、それで一緒に旅をしてくれる仲間を
探しているんですけど……」
「へぇ……魔王討伐のための仲間ね……」
「あ、はい。どうやって仲間を集めればいいんでしょうか?」
 出来れば強くて頼りになる人が欲しいんですけど。
「集めて調べることは出来るけど、魔王討伐となるとなかなか集まらないかもしれないわよ」
「そ、そうなんですか!?」
「随分と平和な時間があったからね、そういう気概を持った人が少なくなってきてるのよね。
それに相手が魔王となると死ぬ確立も高いからね、少し難しいかもしれないわよ?」
「そ、それでも一緒に戦ってくれる人が居るのなら僕は――」
 もう強い人なんて贅沢は言わないので、誰か一緒に戦ってくれる人を――一人で魔王討
伐だなんて絶対に嫌だから。
「分かったわ。それじゃあ声をかけてみるわね」
「はい。お願いします!」
 そうして酒場のお姉さんが声をかけて集まってくれた人は――――
「ほう……あんたが魔王を討伐しようって勇者かい?」
「あなた様が勇者様ですか……」
「勇者って長いから勇ちゃんと呼ぼう」
 女戦士さんに女僧侶さんに女魔法使いさんだった。全員、女の人だったのは驚いたけど、
一人で旅に出るよりは断然マシだ。
「あ、えっと……よろしくお願いします!」
 深々と三人に頭を下げる。きっとこの中で僕が一番足手まといになるだろうから。
 それに最初のやり取りは重要だと思うから。
「まだまだひよっこの子供だが、いいだろう。宜しくな勇者」
「そうですね。小さくて可愛らしくて素敵な勇者様ですね」
「見た感じ童貞ぽいからいいんじゃない?」
 とりあえず三人とも僕と一緒に旅に出てくれるようだ。色々と気になるところはあるけ
ど、文句ばかり言ってたらダメだよね。特に魔法使いさんの言動については基本的にスルー
した方がいいような気がする。
「えーと、それじゃ軽く……本当に申し訳ないですが軽く装備を整えて外に出ましょう」
 貰えたお金が少ないから満足のいく装備は買えないけど、それでも無いよりはマシだろう。
 買った装備で魔物を倒してお金を稼いでいかないと。
「あん? 装備なんか必要ないだろ。ここら辺の魔物は雑魚しかいないんだから、あたし
達が初めから用意している装備で十分だろ」
「そうですね。お金は重要ですから、こんなところで使うのはもったいないですよ」
「そうだよー。どうせ買うのならエッチ装備とかの方がテンションがあがるよ?」
「そ、そういうもんですかね?」
「おう」「はい」「うん」
 三人とも同じように首を縦に振る。ここら辺ではそこまで神経質になる必要がないようだ。
 ここまで自信満々に言うのだから、きっと大丈夫なのだろう。
「それでは魔王討伐の冒険に向かいましょう!」
「「「おー!」」」

 ――と、まぁ……こんな感じで始まった僕の魔王討伐の旅。最初から不安しかないけど、
それでもこの世界に平和をもたらすため、大したお金を寄越さなかった王様の命令を遂行
するため、一度も離れたことのない生まれ育った町を出る。
「おぉ……これが外の世界なんだ……」
 生まれ育った町もそれなりに大きな所だったけど、外の景色は町以上の広さがある。
 何処を見ても終わりのなさそうな景色。そんな無限の景色が続いている。
「もしかして勇者様は町の外を見るのは初めてですか?」
「あ、はい。生まれてこのかた外に出たことがなくて……」
 外は魔物がいるし(居るといっても本当に弱い魔物らしい)怖くて外に出なかったんですよね。
「初めての外の景色はどんな感じだ?」


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