THANK YOU!!-1
瑞稀が世界に行って、5年目の春が訪れた。
変わらずに咲く桜は何かを象徴しているようだった・・。
コンコン。
小学校の職員室で片付け作業をしていた中岡先生は扉を叩く音に気づいて顔をあげた。
そして、ダンボール箱に書類を詰めていた手を降ろした。
今日で、この小学校に来るのは最後だった。
退職・・“寿退職”だった。
「・・誰かしら・・?」
今日は日曜。生徒が来るはずも無い。教師ならノックなど必要がない。
第一、今日、自分の他に来ている先生は居ないはずだ。
一体誰だというのだろう。
扉を開けると、そこには自分よりも少し背が高い女性が立っていた。
セミロングの少しくせっ毛の黒い髪。黒のインナーとデニムのショートパンツ。
その上からフードの付いた小麦色の毛糸で作られた長い丈のパーカーを着ている。
一瞬、知らない人だと思ったが、どこか、自分が以前担任をした生徒に似ていた。
「・・・あなたは・・?」
「・・お久しぶりです。中岡先生」
その声を聴いた瞬間、分かった。
「あ、あなたは・・!!」