THANK YOU!!-6
「トランペットが、大好きだから」
ハッキリ言い切った瑞稀の言葉に、祖父母は何も言えなくなった。
先ほどまで言っていた反対を生み出す言葉が、何一つ言えなくなった。
瑞稀の本心を聞けた叔父は小さく笑った。
「瑞稀。気付いてるか?今の言葉全部、人から与えられたんじゃなく自分の心で言ったんだ。小学生までの瑞稀じゃ、出来なかったことが今出来ている。」
「・・うん」
「なら、アメリカ行きたいっていうのも、お前の心で言ったんだな」
「うん!」
「・・・随分、成長してくれたな。すげーよ、お前。」
「・・え・・それって・・」
叔父の物言いに何か引っかかった瑞稀はどういうことか聞いた。
それが、今の自分が欲しい言葉じゃないかと期待して。
大きく息を吐いた叔父は優しい顔で、告げた。
「行ってこい。行って・・プロのトランペット奏者になってこい」
「・・・!!」
賛成の言葉を聞けて、期待していたとはいえ、信じられない程驚いた。
嬉し涙が、瑞稀の両頬に伝った。
すると、しばらく驚いてばかりだった祖父からも声が上がった。
「若い内にやりたいことをやっておけよ。後悔しないようにな」
「じいちゃん・・!!」
「お父さん!?」
祖父の言葉に喜んだ瑞稀と驚いた祖母が同時に声をあげた。
「いや、だってパンフ見るとアメリカで有名なところみたいだしな。せっかくだし、行ってみるのもアリだろ。才能、あるんだから」
どうやら黙っていた間、ずっと、瑞稀が貰った封筒に入っていたパンフレットを見ていたようだ。
その祖父を見た祖母はため息をついた。そして・・。
「分かった。行ってらっしゃい。でも連絡は絶対にすること。良い?」
「ばあちゃん・・!!」
もう何を言っても無駄だと分かった祖母は小さく笑いをこぼして、呆れ顔で言った。
照れ隠しなのか、食器を持って立ち上がって。
そのまま台所へ移動した姿を見て、瑞稀は嬉し涙を流しながら笑顔で、
「ありがとう!!」
と言った。
そんな家族の一員を見た叔父たちは自然と笑顔になった。
瑞稀が鼻歌を歌いながら洗い物を始めた時、叔父は風呂にはいろうとした祖父と洗濯物をタンスにしまっている祖母を呼んだ。
「なんだ?」
「実はさ、ちょっと頼みたいことがあんだけど」
「珍しいわね。なに?」