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変態少年と、天然お嬢様の物語
【学園物 恋愛小説】

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付き合い始めて一週間…事件は起きた。-5

「でも…どうせなら初めては彼がよかったな…」

 そう呟いたとき、急に目の前に車が止まった。見覚えのある車。

「な、なんだぁ…?」

 私の上に乗っかっていた男が唖然とする。明美も唖然としていた。
 しばしの沈黙の後、出てきたのは執事服を着た双子の女性と男性。

「やれやれ…世話の掛かるやつだ…」

「お助けに参りましたよ、お嬢様」

 いつもどおりの丁寧なお辞儀をすると、彼女は私の上に乗っかっていた男を華麗に蹴り飛ばした。

「んな…!?」

「…おや〜…結構吹っ飛びましたね。手加減はしたつもりだったのですが」

「てめ…ふざけ…」

 男が立ち上がって殴りかかろうとすると今度は男性が男にかかと落としを繰り出す。
 ついでにその辺の子分も適当にやっつけてから女性は私をそっと抱き上げた。

「ちょっと待ちなさいよ!返すと思ってるの?」

 明美がそう叫んだとき、見覚えのある少年が彼女の腕を掴んだ。
 彼だ。麗音だ。その後ろには零美たちも居た。

「麗音…君…」

「明美ちゃん、さすがにやりすぎじゃないかねぇ〜…しつこいストーカー行為といい…
そろそろ警察に通報しちゃおっかな?」

「え…ストーカーされてたの…?麗音君…」

「うむ、でもほら。俺女の子には優しいから。気づかない振りしてたんだよ」

「自分で言うか?」

「けどな、明美ちゃんよ。さすがにこれはやりすぎだ。俺はともかく…
 俺の彼女まで危害を及ぼすってんなら…容赦しないよ」

 珍しく彼が本気で彼女をにらみつけた。思わず彼女は一歩後ずさる。そしてこう叫んだ。

「な、なによ…!何も知らないくせに!麗音君は騙されてるよ!」

「騙されてるって誰に?」

「真菜だよ!あいつ…」

「駄目!やめて…言わないで…!」

 私の叫びも虚しく、彼女は思い切り叫んだ。

「人殺しの娘なんだよ!?そんな奴と一緒に居たら…駄目だよ!
 殺されるよ!」

 周りに居た友人達にもはっきり聞こえたようで思わず一歩後ずさる。
 周りの視線が痛い。瑠衣と瑠奈も俯いていた。
 麗音は少し驚いたような顔をしたが、すぐに顔をあげて私のほうを見た。

「ち、違うの…私…」

 必死に否定しようとするが言葉が出ない。代わりに涙が溢れてきた。
 そんな私に彼は微笑んでこういった。

「知ってたよ。付き合う前から」

「え…?」

「そこの二人から聞いてた」

 そういって彼が指差したのは瑠奈と瑠衣。二人とも申し訳なさそうな顔をしていた。

「じゃあ…なんで…!」

「昔からの幼馴染なんだ。よく彼女の家にもお邪魔した。だから彼女の親父さんのことも、おばさんのこともよく知ってるよ。二人ともいい人だった。 
 そりゃ、人を殺したことは許されるべきことじゃない。
 けどな、明美ちゃん。君は何も知らないんだろ?真菜の親父さんがどうして人を殺したのか。何も知らないのに彼女のこと人殺しの娘呼ばわりするんじゃねぇよ」

 殺意に満ちた目で彼女をにらみつける彼。彼女は思わず怯えて震えていた。
 そして泣きながら逃げ出していった。

「…さて、帰ろうか。瑠奈さん、俺が抱っこする」

「抱っこいうな!って、きゃぁっ!」 

 瑠奈の腕から無理やり私を奪い去ると、彼女は赤子を抱くように抱えた。

「…軽っ。胸の割には意外と…」

 ぼそりと呟く彼。胸に対して視線を感じた。

「む、胸は関係ないでしょうが!見んな!へんな目で見るな!」

「うぉっ!?ちょ、暴れるな、落ちる落ちる!う、うわぁっ!?」


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