投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

THANK YOU!!
【純愛 恋愛小説】

THANK YOU!!の最初へ THANK YOU!! 112 THANK YOU!! 114 THANK YOU!!の最後へ

THANK YOU!!-1



「じゃあ、私達のクラスはゲームセンターに決定しましたーっ!!」
『いぇーいっ!!!』


そう声が上がったのは中学2年の教室。
二人の生徒が教壇に立ち、一人が黒板に書いていく。そのほかの生徒は自分の机に座ってちゃんと話し合いに参加していた。
中学に入って二回目の文化祭がもうすぐ行われる。
一年のときはクラスコーナーを担当することは出来なかったが、二年になると学校に慣れてきただろうということで演劇もしくはクラスコーナーを担当することが出来る。
そのことに、行事好きな瑞稀たちのクラスが盛り上がらない訳がない。
勿論、このクラスに在籍している瑞稀も参加しているその一人。しかし、心は別の世界に飛んでいた。

夏のフェスティバルで団体賞を受賞することが出来た瑞稀は、喜びのまま家に帰宅した。
叔父に話そうとした時に、その叔父から訪問者が居たことを聞かされた。
その人物は、フェスティバル中に聞こえた声の持ち主。鈴乃拓斗。
何故拓斗が来たのか、理由を知っている筈がない叔父は瑞稀をからかったが、急に顔をこわばった姪を見てすぐに何も言わなくなった。
心当たりがない訳ではない瑞稀は、頭がクラっとしたのを感じた。
何故、自分の家に来たのか。理由は恐らく。

「(・・卒業式のあと・・のことだよね、やっぱり)」

瑞稀は机に肘をついたまま頭を抱えた。妙な格好のせいで背中が悲鳴をあげているがそれを気にしている余裕は無かった。

確かに、あの日に言われた拓斗の言葉は瑞稀を今だに苦しめている。
しかし今まで連絡も取っていなかったのに、何故いきなり家に来たのか。もし、自分が居たとして、何を言うつもりだったのか。
だけど今更何かを言われたとして、自分が簡単に納得出来るのか。・・いや、多分無理。
ここまで距離を置いて平行線を辿っておきながら・・拓斗が自分を守りたいが為に言葉を伝えに来たのなら、それは瑞稀にとって望んでいるモノではないし、むしろ納得できる訳がない。

「・・・はっ・・」

フェスティバル中はあんなに拓斗が愛おしくて仕方なかったくせに。
瑞稀は拓斗を許せなくなっていく自分に対して言葉を吐いた。
そんな瑞稀の頭にパコンと軽い衝撃。なんとまあ、何かのデジャウだ。痛みはあまり無いが。バッと勢い良く振り返るとそこに居たのは恵梨だった。

「恵梨・・痛いんですけど・・。」
「いやー、なんか話し合い進んでんのに自分の世界飛んじゃってるから」
「・・あのね・・。てか、恵梨の席そこじゃないでしょ・・」

呆れたように溜息をついて持っていた(恐らくは瑞稀を叩いたであろう)ペンケースを机に置いた恵梨。否定が出来ない瑞稀はそんな様子を見てただ皮肉を込めて感じている疑問をぶつけた。
事実、同じクラスメイトで親友である恵梨の席は廊下側の一番後ろ。
瑞稀の席は窓際二列目の後ろから二番目。

「ん?あー、なんかやりたいゲーム決めるために5分くらい自由になったんだよ。それで瑞稀とゲーム何か担当したいから来たってわけ」
「あ、そうなの?わざわざゴメン。」
「いいよ、大体分かってるから。」
「・・ゴメン」

恵梨の慰めるような優しい言葉に、瑞稀は罪悪感が押し寄せ謝った。
謝ることじゃないでしょ。と恵梨は笑った。そんな全てを知っている親友に、お礼を告げた。
話を変えるように、恵梨はそういえばと言葉を漏らした。

「今日の部活。話したいことがあるから絶対、全員集合って言ってたね」
「あぁ・・なんだろ?一昨日文化祭コンサートの話、したばっかだよね」

瑞稀も、昨日の夜に回ってきた部活の連絡メールを思い出した。

「うん。まあ、変なのじゃなきゃいいけど・・」
「・・・また恵梨のソロとか」
「・・もう、やなんですけど・・」

瑞稀が少し考えて真面目な答えを出すと、恵梨はげんなりとした表情を見せた。
もう、去年の運動会で懲り懲りなんだろう。
他に思い当たらない瑞稀は、これ以上考え事をすると知恵熱を出すという考えに至り、考える事を放棄した。
部活のことも、拓斗のことも。

「ま。今日行けば分かるよ」
「・・コンサートとか増やされないといいけど・・」

文化祭コンサートで手一杯な恵梨がボソッと呟いたのを聞いて、瑞稀はまさかと苦笑いを返すしか無かった。



THANK YOU!!の最初へ THANK YOU!! 112 THANK YOU!! 114 THANK YOU!!の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前