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THANK YOU!!
【純愛 恋愛小説】

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THANK YOU!!-1



ドキドキの入学式から一ヶ月、すでに桜は散った5月。
瑞稀はいまだにクラスメイトといまいち馴染めずに過ごしていた。
その心細さゆえか、小学校時代・・特に6年生のころを思い返しては顔を暗くさせていた。
時々、同じゲームの趣味を持った恵梨が話しかけにきてくれたり、グループ活動に誘ってくれたりと気にかけていてくれたので特別、一人になるという訳でもなかった。

そんなとき、学園三大行事の一つである体育祭が間近に迫っていた。
様々な競技が学年対抗で競い合う。もちろん、赤白に分かれてはいるが。
また、学年競技では、クラスが本気の勝負をする。
瑞稀たち中学一年は、二人三脚。二年生は大縄。三年はいかだリレー。高校生はリレー。
となっている。

そのときに生徒が入場する行進曲を、吹奏楽部が直々に演奏するのが伝統となっていて、
最近だと開会式にファンファーレを吹くことも伝統化されている。

瑞稀は特にそのことに不満など無く、むしろどれくらい自分が部活としてトランペットを吹けるのか知りたかったのでまたとないチャンスを喜んでいた。
しかし、そうでない人が一人。

「うーん・・・」
「・・・大丈夫?恵梨ちゃん」
「無理」
「えぇ・・」

そう、吹奏楽部唯一のサックス奏者となってしまった紫波恵梨だった。
聞いてみると、瑞稀の通った小学校と違って恵梨の小学校は特に鼓笛隊というものも無く、運動会などで大々的に出たことが無いらしい。
恵梨はただ幼いころから音楽は大好きだが、ただサックスを続けてきただけなようでもあった。
なのにも関わらず、初となる発表の舞台にソロで挑むことにさっぱりした性格の恵梨でも少なからず緊張とプレッシャーがあった。それで、不満が募っていた。
瑞稀は鼓笛隊で活動しているおかげか、その気持ちがわからない訳でも無いので、恵梨を気にかけていた。

「だってさ、朝はサックス。授業では二人三脚の練習。放課後もほとんど一人でサックス。さすがに疲れてくるよ」
「・・・まあ、分かるけど・・。でも、今日はごめん」

瑞稀は、恵梨の言葉に一部引け目を感じて謝った。それを見た恵梨は、そういうつもりで言ったんじゃないから気にしないでと慌てて弁解した。
なぜ、瑞稀が引け目を感じたのか・・。
それは・・。



「っあ・・!!」
「つ!!瑞稀ちゃん・・!大丈夫?」
「・・ちょっと、しっかりー!!八神さん!!」

時間を遡って、6時限目の体育。グラウンドのコーストラックの中。
一つのクラスが二人三脚の練習をしていた。
そして、最後のアンカーのペアの一人・・瑞稀が派手に転んだ。それに釣られて、一緒にペアを組んでいる恵梨もバランスを崩して、膝をついた。
瑞稀の半袖半ズボンの白い手足はすでに何度も転んでいるようで、砂を擦った痕と赤い血が固まっていた。



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