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THANK YOU!!
【純愛 恋愛小説】

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THANK YOU!!-2



もうお分かりだろうが、二人三脚のアンカーのペアに瑞稀と恵梨が組む事になった、
生まれてから一度も二人三脚をしたことがない瑞稀を、クラスの中で一番100mのタイムが速かった恵梨が引っ張っていけば問題無いとクラスメイトたちは考えたのだ。
しかし、やはり経験不足が足を引っ張り、恵梨とタイミングを合わせられない。
そのために焦り、なんとか役にたたないと。と慣れない走り方をしてしまい、転ぶ。
転ぶと、クラスメイトたちから呆れる声がかかる。そしてまた焦る。
まさに、悪循環の中を巡っている瑞稀。
そのことに気づいている恵梨はあえて何も言わずに少しずつ瑞稀の走りやすいようにスピードを合わせていく。
しかし、気づいていないのは見ている周りのクラスメイトたちだった。

なんとかゴール地点まで走りきった瑞稀と恵梨に近づくのは学級委員と何人かのクラスメイトたち。
そして、先ほど転んだ時についた砂を払っている瑞稀に、

「体育祭、出るの辞めていいよ」

と、低い声で告げた。
言われた瑞稀は、一瞬何も言えなくなったが言葉をちゃんと理解した瞬間、何も言えずにうつむいた。
その言葉を考えていなかった訳ではなかったのか恵梨はただ黙っていた。
何も反論せずにいた瑞稀に、これ幸いと何人かのクラスメイトたちも不満をこぼし始めた。

「そうだよ、いてもタイム縮まんないし」
「紫波さんの足引っ張ってるだけだよ」
「正直、迷惑」
「頑張ってるみたいだけど、無駄みたいだしね」

次々と言われる言葉のナイフに、瑞稀の心がえぐられるような気持ちになる。
だが、さすがに瑞稀は分かっていた。
今のこのクラスのタイムだと1位を取ることは難しいと。うまい具合にタイムが縮まらずに、焦っているのだ。ましてや、アンカーと言えば、最後の勝負の大事な局面。
恵梨が選ばれたのはよく分かるが、そのペアとして自分が選ばれたのは相応しくない。
それでも、クラスに今だ馴染めていない瑞稀に、恵梨と息を合わせて走れなどというのは
どれだけの無茶なのかわかってもらいたかった。
でも、現段階で足を引っ張っている今の瑞稀にそんな事を言う勇気は無かった。
ただ今にも溢れ出しそうな涙を堪えるだけでいっぱいいっぱいだった。

「だから、二人三脚抜けて」
「・・・っ・・」

決定的な言葉を言われ、辛くない訳がない瑞稀は泣き出しそうな顔を上げることが出来なかった。その目から一筋の涙が流れた時、目の前に自分の着ているジャージと同じ色の青色が広がった。
驚いて、顔を少し上げるとそこまで離れていない身長の持ち主である恵梨の顔。体は、恵梨の腕の中に居た。思わず、顔が赤くなる。
クラスメイトたちも、突然の展開についていけず、口をあんぐりと開けたまま。
恵梨は何も言わずに瑞稀の両耳を手で塞ぐと、クラスメイトたちに向かって息を吸った。

「別にタイムが縮まないのは瑞稀ちゃんのせいじゃないじゃん。それに、瑞稀ちゃんは少しずつ慣れてきてるよ。その証拠に、転ぶまでの時間が長くなってるし」
「・・・・!」
「・・?」
「大体、まだ練習初めて一週間しか経ってないし。まだ焦る必要なんてないと思うけど?」
「・・!!」

さらっと言った恵梨の言葉に、瑞稀以外の、その場にいた全員が我に返ったかのような表情をした。一方、瑞稀は強い力で耳を塞がれてしまっていて、まったく聞こえていない。
クラスメイトたちは図星をつかれ、居た堪れなくなりその場を離れようとした。
しかし、恵梨の表情が急に硬くなったのを見て、まるで雷に打たれたかのように体を硬直させた。

「とりあえず、瑞稀ちゃんに謝った方が良いと思うけど?」

そこまで言うと恵梨は瑞稀の耳を自由にして体も解放した。
恥ずかしさで慌てて恵梨から離れた瑞稀は、目だけは笑っていない笑顔の恵梨と何故か冷や汗をかいているクラスメイトたちを見比べて、何の会話をしていたのかと首を傾げた。
もはや謝罪を強制されたクラスメイトたちは、瑞稀に頭を下げて謝って、慌てて校舎へ走って逃げていった。
その様子をちゃんと見ていた恵梨は腹を抱えて笑っていたが、瑞稀は良く状況が分からずにキョトンとしたままだった。

ひとしきり笑った恵梨が、荷物を持って部活に行こうと誘ってくれたので、それに乗る。
教室に戻って荷物を持って更衣室に行き、着替えながら瑞稀は恵梨が何か言ってくれたのではないかと考えた。
ただでさえ、ペアで足を引っ張っているのに・・そう悲しく思いながらも、恵梨が自分をかばってくれたのに嬉しくなった。



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