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THANK YOU!!
【純愛 恋愛小説】

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THANK YOU!!-6



体育祭まであと一週間を切った。瑞稀は恵梨と一緒に部活が終わったあと、空き地で居残り練習をするようになった。
これまで鼓笛隊の仲間としか楽器の話が出来なかった瑞稀にとって恵梨の存在が大きくなっていた。
吹奏楽部の仲間としても勿論、友達としても相談したり辛い気持ちになっていることを誰よりも分かってくれる。また支えてくれる優しさ。
それに瑞稀と趣味や好みが似ているから会話が弾む。恵梨のユーモアある性格のおかげでもあるが。
秋乃とはまた違う親友と呼んでもおかしくない・・そこまで大きかった。

「どうかした?」
「・・え?あ、ゴメン、何でもない!」

改めて恵梨のことを考えていて頬が緩んでいた瑞稀を心配したのか恵梨から声がかかった。
それに気付いて慌てて楽譜と向き直ろうとしたが、一回緩んでしまった頬はそんなすぐには治らない。

「・・・どしたの、本当に」
「あ、の・・ね。恵梨ちゃんと毎日一緒にいて、すっごく楽しいんだ」
「・・・」

笑顔で言った瑞稀の言葉に、最初は鳩が豆鉄砲食らったような表情をしたがすぐに恵梨も頬を緩ませた。

「うん、ウチも同じだよ。瑞稀ちゃんと一緒で楽しいし、憧れてる」
「・・!・・えへへ・・ありがと」

照れくさそうにしながらも嬉しい瑞稀は母親に褒められた子供のような照れ笑顔になった。
初めて人に憧れと言われた。
自分は何をした訳でもないし、むしろ迷惑しかかけていないのにも関わらず。
そう自虐するが、嬉しいものは素直に嬉しい。緩みきってしまった頬は当分戻りそうにない。

中学に入って恵梨は初めて、何かに一生懸命になっている子を見た。
それに、無邪気な子供のようにコロコロ変わる表情を自分と話している時にする瑞稀は今まで同年代とまともに付き合ってこなかった恵梨にとって惹かれるモノがあった。
いつも恵梨の周りにいるのは大人で、色々学べたがそれ故に同年代の子たちと一歩差ができてしまった。それ以来、同年代と上手く付き合えた試しがない。
だが、そんな恵梨はクラスメイトたちと上手く話せるようになった。
勿論、自分の話す努力も実を結ぶ結果に繋がった。ただそれ以外の大きな要因。それは瑞稀だ。
二人三脚こそ足を引っ張ってはいるが、瑞稀の人を思いやる人柄や無邪気な表情に惹かれる人間は多い。瑞稀に話しかけるクラスメイトの大半がそうだろう。
その中で、いつも一緒に居る自分に話を瑞稀やクラスメイトが振ってくれるおかげで少しずつ話せるようになった。もとより、恵梨は様々な性格の人間と話すことが好きだ。
そうしていく内に、自分から話しかけに行く事は勿論、同年代の子との差をなくすことが出来た。

そんな恵梨は、誰よりも瑞稀に憧れている。友達として、吹奏楽部員としても。
また瑞稀も、誰よりも恵梨に憧れている。友達として、吹奏楽部員としても。
お互いなかなか口には出さないが言葉にしなくても伝わっている。それほどの信頼関係を築けていた。

その証拠に、瑞稀は二人三脚で転ばなくなった。
競技に慣れてきたという理由もあるが、一番は恵梨を信じ、思い切り走れるようになったからだ。今では煙たがれていたクラスメイトたちから期待を寄せられるようになり、またタイムも走る度に記録を更新していた。
瑞稀の不調が無くなり、クラスのタイムが上がったことで団結力が高まった瑞稀のクラスは練習始めとは一転して賑やかな楽しいクラスになった。


「ゴールっ!!!」
「すっごい、また記録更新だよ!!」
「アンカーがもう脅威だね!」
「・・なんか日本語おかしくない?」
「う、うるさいなあ!」

「アハハ、何やってんだか」
「さあ?見てて面白いし良いじゃん?」
「確かに」

ゴールテープを切った瑞稀と恵梨はコーストラックの中ではしゃぐクラスメイトたちを見て笑っていた。
こんな風に、練習で笑えると思っていなかった瑞稀は一安心をしていた。
恵梨は瑞稀の心が落ち着いていることを確認すると小さい微笑みを見せて、足を繋いでいる紐の結び目を解いた。




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