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翼の記憶
【ファンタジー 恋愛小説】

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ふたりの王-1

人の目には一瞬・・・稲妻が走ったようにしか見えなかった。





葵に斬りかかった暁林の短剣は、雷帝の神槍によって勢いよく弾かれた。





ビリビリと神槍の矛先が稲妻をまとって暁林へと向けられた。ゼンの体がオーラを放ち、その威圧感に館全体が震えた。





「・・・簡単に人の命を奪うようなクズが王になれるわけがなかろう・・・葵の治める人界にこのような下衆がいるとはな・・・・」





「王を亡き者にしようとは・・・恩知らずも甚だしい。その死を以て償うがよい・・・」





振りかざした神槍が暁林を貫こうとした時・・・葵がゼンの背中に触れ、首を横に振った。





「葵・・・」




目を閉じて翼を出現させた葵は、一歩前へ進み暁林へ命じた。





「移民者を解放しなさい。他人を傷つけてはなりません。領地を広げ、人々を脅かすことも許しません」





それでも尚、暁林の目はぎらつき葵を罵った。





「・・・命令だぁ?笑わせるなっっ!!!
そんな作り物の羽を見せつけて何の力も持たぬ小娘がぁぁああっ!!!・・・この俺を止められるとでも思っているのか・・・?」





ため息をついたゼンは重い口を開いた。





「葵が温和な性格で良かったな・・・俺だったらすでに百回は殺してるぜ?」





「暁林・・・あなたは人を殺めていますね」





「俺に刃向うやつはこれからも殺し続けてやるっ!!!となり村の奴等も全員皆殺しだ!!!」





「・・・そこまでする必要はないのでは・・・暁林様・・・・」




背後に控えていた家臣が思わず口を出すと、




「うるさいっ!!!!」





激怒した暁林は隣で腰を抜かしている家臣の剣を引き抜き、その者の胸を貫いた・・・





鮮血が足元に広がる。
声をあげることも出来ず、家臣は倒れてしまった。




「・・・・・」





指先に光を集めた葵が倒れた家臣へ癒しの光を飛ばした。淡い柔らかな光が彼を包み、傷を癒していく・・・。





あまりの恐ろしさに逃げ出す家臣たち。返り血を浴びた彼らの姿をみて館に詰めかけていた人々が恐怖のあまり声をあげて散り散りになった。





「どうする?葵」





呆れた口が塞がらないと言ったように、ゼンは大きくため息をついた。





「暁林、あなたをこの地に縛り付けておく必要があるようですね」







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