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翼の記憶
【ファンタジー 恋愛小説】

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強き者と弱き者V-1

「ゼン様ありがとうございます。最近お見えにならなかったので・・・心配しておりました」




「・・・あぁ」




ふと、ゼンは葵の顔をみて真剣な表情になる。何か言いたそうにしているが、ここは王宮ではない。




「・・・この地は何かしがらみでもあるのか?」



ゼンは言いたいことを飲み込み、葵がここにいる理由とおそらく関係があることへ話題をうつした。





「・・・えぇ、この地を治めるのは暁林という方らしいのです。隣村を合併という名目で領地を広げようとしているみたいですが・・・移民者を奴隷のように扱っているところを見ると・・・・」





「・・・だな」





葵とゼンは窓の外にいる人々の貧困の差を目の当りにして同じことを思っていた。





すると・・・背後の扉があき、暁林が数人の家臣を従えて室内へ入ってきた。





「これはこれは・・・雷帝ゼン様とお見受けいたします。このような辺境な国にお越しいただけるなど身に余る光栄です」





「いかにも・・・俺がゼンだ」





「もしや・・・そちらの方も王と名が同じというのは・・・偶然ではなさそうですね」





ねっとりとした視線が葵に向けられる。ゼンはその視線から葵をかばうように二人の間に立ちはだかった。





「本来・・・力を持つ者は弱き者を守り、助ける存在である。その力を己の私利私欲に使うようでは・・・人界の王の怒りを買っても仕方あるまい?」





暁林がゼンを見下したように嘲笑った。





「王が民の政治に口を出すと?万物を守護する王がそんなことでお怒りなると思うか?」




暁林は九条と同じようなことを言っている。王がやるべきことと、民の間での揉め事はまったく別物で・・・王が干渉すべきことではないと言いたいのだ。





「・・・・」





答えを出せないでいる葵の手に優しく手を重ね、ゼンが微笑んだ。





「万物を守護するのが王の役目なら・・・苦しんでいる民を助けるのも王の役目だ。葵・・・お前はどうしたい?」





にわかに動揺をみせる家臣たちをよそに、暁林は忍ばせていた短剣に手をかけ、ゼンの背後から姿を見せた葵に勢いよく斬りかかった。





「・・・っ本当に人界の王が出てくるとはなぁあああっっ!!!!
貴様が死ねば・・・俺様がこの世界の王だっっ!!!」




家臣たちが暁林を止める間もなく刃が葵を襲った・・・


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