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翼の記憶
【ファンタジー 恋愛小説】

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強き者と弱き者U-1

扉が開かないからと言って、葵には何の障害にもならない。だが、見張りがいるということは・・・葵の姿がなければ、その者が咎められるということになる。





窓辺に寄りどうしようかと考えていると、仙水の声が届いた。





『葵様、ゼン殿がいらっしゃいました。お戻りになりますか?』





『仙水ごめんなさい・・・今すぐには無理だわ。ゼン様に次はいつお会いできるか聞いてもらえますか?なるべく早く会いたいのだけれど・・・』





『わかりました、少々お待ちください』





『葵様、ゼン殿が・・・』





『どうしたの?』





『そちらに向かわれました。なるべく早くお会いしたいと葵様のお言葉を伝えたら「俺が会いに行く」と、発たれました』





まさに閃光のようにゼンの大きな気配が近づいてくる。迷うことなくこの国の傍まで移動していた。





美しい翼を翻して、門のうえに降り立ったゼンは葵の輝きを探した。





その下では、門番がゼンに向かって罵声を浴びせている。




(なんだ?うるさい輩がいるな・・・
葵はなんだってこんなところに・・・・)





ゼンの様子はたちまち暁林の耳に入った。





「・・・ほぅ?翼をもつ男か・・・」





葵の元へと移動するゼンは横目で格差のある民を見やっていた。小さく指をはじくと、彼らの足にはめられている枷が火花を散って砕けた。





彼らは不思議そうに外れた枷を眺める。頭上をゆくゼンの姿を見てひとりが声をあげた。





「あれは・・・っ!!
雷帝・・・ゼン様だ・・・」





「どうしてこのようなところに・・・」





ゼンの登場は移民たちに希望を与えた。この状況を打開してくれるかもしれない、と。




暁林の館、葵の部屋の窓へとゼンはたどり着いた。内側から微笑み手を振っている葵がいる。





「よっ!!
お前が地上に降りるなんて珍しいんじゃねぇか?何やってんだ?」





館のまわりに集まった人々は、雷帝が自ら訪ねてくるとは何事かと好奇の眼差しを向けている。





これ以上人目につかぬよう、葵は窓をあけてゼンを招き入れた。





「お前が俺に会いたがってるって聞いてな・・・迎えにきちまった」





ゼンは照れたように視線をそらしながら頬をかいている。





その様子が可愛くて葵は頬をゆるめた。




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