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翼の記憶
【ファンタジー 恋愛小説】

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雷帝V-1

この時、葵が他の異世界の王の存在を許していたら・・・彼らもまた、人界を行き来できたかもしれない。






だが、簡単に許すことが出来ない理由があった。異世界の五大国の中にはヴァンパイアという人の血を好む種族がいるという。もし、彼女がその存在を許してしまえば・・・人界が危険にさらされることとなる。






彼女がゼンとこの世界を繋ぐことができたのも、雷がこの人界にも存在しているからである。さらに、民の信仰により雷神の存在が確立している。






ゼン以外の王の話は想像に難しく、人界では簡単に受け入れることが出来ないのだ。






それでも葵や神官たちにはとても新鮮な話だった。いつか会える日が来ればいいと、この時は誰もが思っていた。






ゼンがこの世界で存在が可能な理由も"世界の意志"が説明した。なるほど、としばらく考える素振りを見せたゼンだが、自分がその特権を得られたことにとても満足している様子だった。






人界にも雷があり、"雷神"をかたどった像があることを伝えるとゼンは直接見てみたいと言い出した。





大和の故郷にそれがあることを伝えると、王二人と、神官の三人は地上へと降り立った。





―――――・・・





目に見えぬオーラをまとった神々しい彼らを目にした町人たちは・・・手を合わせて拝む者や、握手を求めてくる者もいた。






大和に案内され、水晶で創られた葵の像のとなりに・・・威厳あふれる猛々しい雷神の像がたっていた。






「おっ!!
これが"雷神"か・・・!!」





その像の手元には稲妻にも似た巨大な槍が握られている。





「へぇ・・・想像で創ったにしちゃ、ここまで似ているとはなぁ」





癖のある短髪や、鋭い眼差しさえゼンとそっくりに見えてくる。葵は雷神とゼンを見比べて本当にそっくりだと声をあげた。





するとゼンは右手をかかげて・・・






一瞬、閃光が走ったかのように激しく煌いた手には、稲妻をイメージしたような美しい槍があらわれた。






まわりを囲んでいた民からは感嘆の声が響き、さらにはその背にある翼からゼンは雷帝と呼ばれるようになる。






【人界の王・葵】と、異世界の【雷の王】とのつながりはこの時から末永く続いていくこととなる。




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