K×3-4
「ナイス、ピッチ!」
「ひゅ〜さすがだね〜」
「いいぞ!輝!」
チームメイト達が次々と労いの言葉を掛ける
「よう!どうだ?僕のピッチングは?」
ベンチに戻った輝はすぐに不破に感想を尋ねる
「直球のノビ、さらにあのコントロールには驚かされたっす」
率直な感想を伝える
「いよ〜不破、野球部に入ったのか?」
仁が笑いながら不破に話掛ける
「別に入ったわけじゃないっすよ!勘違いはやめてください」
ストラーイクバッターアウト
3回裏の岸鷲校の攻撃は7、8、9番の三者凡退で終わった
「さぁーて点が入らなきゃ勝てないっすよ」
ヘラヘラと笑いながらからかうように不破は言う
「まだ序盤だ!見てろよ、絶対勝ってやるからな」
この回も輝のコントロールは光る
相手バッターを軽く3人で片付けた
その裏の攻撃は1番からの好打順
トップバッターの仁
あえなく三振
続く2番の稲葉がフォアボールを選び塁に出る
ワンアウト、ランナー1塁で3番の輝に回る
(エースでクリーンナップか・・・
エースにおんぶ抱っこチームだな)
不破の言う通り、岸鷲校は輝、一人で持ってると言っても過言ではない
輝を除けば、山口と仁ぐらいしか、まともな人材がいない
昌校のピッチャーは振りかぶって輝に対し第1球を投げた
ボール
高めに外れたボールを悠々と見送る
そして、2球目、3球目とボールが続く
連続フォアボールを避けるため、4球目に真ん中高めの甘い球が来た
その球を輝は逃すわけがない
キーン
白球と金属バットがぶつかった音が響く
輝のスイングは確実にボールを捕らえていた
「センター!バック!」
相手チームのキャッチャーは叫んだ
センターは必死にバックするが輝の打球はセンターの頭上を越える
その間にランナーの稲葉はホームに生還
岸鷲高校、初ヒットは輝のタイムリーヒットとなった
これで4ー1の3点差
この勢いで追い付きたい所だが4番、山口、5番、川島、凡退
その後も輝はヒットを許すものの点は与えず、回は6回裏ノーアウトランナー無しで輝に打席が回ってきた
前打席の輝の当たりにビビった昌校バッテリーは警戒しすぎて、ストレートのフォアボールを与えてしまう
(あ〜あ・・・
期待のバッターが歩かされるとはね)
不破が心の中で呟く
次は4番の山口
ピッチャーが振りかぶった瞬間、輝は次の塁に向かって走りだす
盗塁だ・・・
不意を付かれた昌校バッテリーは盗塁を許してしまう
(おいおい、走るか?)
何のサインも無しの輝、独断の盗塁に相手だけでなく味方までも驚いた
「後は頼みますよ!!
キャプテン!!」
塁上で輝が山口にエールを送る
その輝の盗塁に答えるように山口は次の球をバットで捕らえる
打球は内野を越えた
球が内野を越えたのを確認すると輝はすかさず3塁に走る
球はセンター前に落ちた
センターはすぐに拾うとサードに送球するが
その時にはすでに輝はホームに向かって走っていた
「暴走だ!!ホームで殺せる」
相手キャッチャーが叫ぶ
サードがキャッチャーに送球する
ボールを持ったキャッチャーが輝にタッチしようとするが・・・
輝は滑り込みキャッチャーのタッチを掻い潜り、ホームに生還した
「あと、2点!!」
1点をもぎ取った輝は叫ぶ
「普通ピッチャーがあんなスライディングするか?」
不破の言う通りピッチャーは怪我を避けるために、できる限り危険なプレーを避ける
キャッチャーとのクロスプレーなら尚更だ
(なんて人だ・・・
俺を入れるためにここまでするなんて・・・)
輝の気迫のプレーにより不破の中で何かが変わり始めていた