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溺れる爪痕
【ファンタジー 官能小説】

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純血-2

 ノアは純血のサキュバスであり、生まれもった魔力量は最強ランク。能力を比べれば、それはアズールよりも遥かに上である。

しかし、ノアはサキュバス――つまり、女として生まれた。

そんなノアを現在の軍事隊最高魔術師に仕立て上げたのは、他でもない学術最高を誇るアズールだった。

武力に長けているノアはアズールとは違い外での任務が主である。

そのため身体的にも負担が少なく効率の良い男性体へ、本人も了承の上で施術は行われた。

逞しくしなやかで中性的な外見は見るものを魅了し、男であってもノアは美しい。

白い肌に銀色の髪はサキュバスの本来のままで、充分に透明感を持つシウのそれよりも艶やかだった。

そんな彼を見上げ、今まさにアズールは後悔していた。

彼を少しも手を抜かず作り替えてしまった自分自身に。

施術をした後で、しかも自分よりも身長も高い男となったノアに、まさかこうも組み敷かれることになるとは、夢にも思っていなかったのだ。

女であった時には手すら触れたこともなかったのに、である。

たまに訪れては気紛れに遊んでいくノアが、今日という今日は心の底から鬱陶しい。

「俺は疲れてるんだ、退いてくれ」

自我を無視してあっさりと質量を増していく部分に気を散らしながら、なに食わぬ顔で肩に置かれた手を払う。

「そう言うと思ったからアズールのお仕事、手伝ってあげたよ」

払われた手の甲でアズールの顎を撫で、ノアはわざと小さく囁いた。

ゆっくりと目を見開いて言葉を反芻させたアズールは、起き上がろうと半身を傾ける。

「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。ウチの若い子にお風呂入れさせてるだけだから」

「お前・・・・っ」

「平気だよ?アズールも知ってるでしょ?ウチの隊はみんな俺に耐性があるから混血に眩んだりしない。悪戯っ子が多いけど俺の言い付けなら絶対に守るしね」

こつんと当てた額を押し付けて、アズールに跨がったノアは無邪気に言葉を紡ぐ。

そして耳朶に唇を寄せ、最後に付け加えるようにこう言った。

「だからきちんと言っておいたよ。殺しちゃ駄目だよ、って」


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