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溺れる爪痕
【ファンタジー 官能小説】

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愛撫-5

 くつくつと、喉の奥から自嘲の息が溢れてくる。

ああなんて滑稽なこと。貴族とは、魔術師とは、これほどまでに己らの欲のままに生きているのか。

そう思った途端、あの石畳の牢が脳裏を掠め自分の出生を呪う。

「なら靴でも舐めましょうか?ご主人様?」

少女の卑下た笑みと皮肉も気にしていない様子で青年は相槌を打つ。

「君は賢いね。まだ調教は受けてないはずだけど」

「奴隷商人や買い手から払い戻された姉さんが何人もいたよ。調教師が糞でぶっ壊されてさ。あの牢には元奴隷と奴隷候補の両方がいたんだ」

「なるほどね。色々なケースがあるだろうけど、大体の流れは知ってるわけだ。言葉はどこで?文字の読み書きは出来るかい?」

「・・・ペットに読み書きが必要なの?そろそろ教えてくれない?あたしは何のためにあんたに買われたのか」

「はは!言われてみれば確かにそうだね」

声を上げ笑った青年に、少女は肩透かしを食らった気分になった。

奴隷としての道筋に落ちてしまった以上、ここから外れることはできない。

見ず知らずの主となった者に従い、生かされ死んでいく定め。今はまだある反抗心も、いずれ自我と共に打ち砕かれると教えられた。

それならば、早くこの一生を、心を壊してほしい。

少女は言い様のないもどかしさに苛立ちを覚えた。


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