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溺れる爪痕
【ファンタジー 官能小説】

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愛撫-4

 押し積めるように大人から子供までを収容していた暗い石畳の牢を思い出す。

貧困の為に売られた娘、孤児、奴隷から生まれた子供、そこにいたのは全て貴族の奴隷として飼育を待つだけの者たちばかりであった。

所謂奴隷候補はこれまでの人間としての尊厳は迫害され、買い手が付いた時点で調教されて場合によっては家畜以下の扱いを受ける。

親はなく自分がどこの誰かも知らず、少女はそんな自身の行く末を脳に刷り込まれ生かされてきた。

物心付いた頃にはそれを当たり前だと捉えており、嘆き泣く新参の娘たちに何の感情も抱くこともなく、いつか自分にも買い手が付き調教され奴隷として陽の目を浴びるのだと。

希望も絶望も知らなかっただけ、他の奴隷候補より少女はまだ恵まれていたのかもしれない。

初潮を迎えるまで買い手が付かなかったことは稀であったが、それは少女の特性に起因していた。

「君は幾つからあそこにいたの?」

「知らない。気付いたらあの牢にいた」

「君は微弱だけど力を持っているね」

少女の片膝に手を置き青年が尋ねると、僅かに少女は身動ぎをし言葉を詰まらせる。

「大丈夫。今は話を聞きたいだけだから、リラックスして」

青年はあやすように膝を撫で、続ける。

「君の所有権は俺にある。もうあの牢に帰すことはしないよ、約束する」

少女はその声に耳を傾けながら、自分のいる部屋をゆっくりと見回した。

殺風景な小さな部屋には机とパイプベッド、自分の腰掛けている一人掛けのソファーがあるだけ。魔術師として優遇された青年の部屋であるとは到底考え難い質素な造りである。

「あたしは、あんたの奴隷になるってこと?」

「いいや。そうだな、言うなれば・・・ペット、かな」

それを聞いた少女は、のろりと視線を下に戻す。

自身の行く末を知っている。こうして生まれたことに諦めてもいる。しかし、まだ調教を刻まれていない彼女に家畜以下を実感することはなかった。


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