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溺れる爪痕
【ファンタジー 官能小説】

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愛撫-3

 「魔術師なのか調教師なのかハッキリしない男だな」

瓶から流れた得たいの知れない液体を唇に注ぎ込まれるも、少女は皮肉を込めた悪態を止めない。

戦闘向きではないと本人がいうのも頷けるほど、屈んだローブから覗く首の線は細かった。折れてしまいそうだと、か細い少女が思うくらいに。

「あはは、そうだね。調教師であり魔術師であり、俺はね、ここでは薬剤師なんだよ」

「薬剤師?」

「そう。前戦に立つほど膨大な魔力はないし、貴族サマに差し出す犬を仕上げられるほど暇でもない。俺の才能は生まれながらに治癒に優れていたから」

「治癒・・・?」

「まあ今は戦争もないし、もて余された能力ではあるけどね。お陰で御国や貴族に依頼された薬を調合したり、新薬を開発したり、そんな仕事ばかりだよ」

「あんた、調教師じゃないの・・・?だって、あたしは・・・」

露骨に疑問を浮かべ首を傾げた少女に、青年は「あ、」と思い出したように顔色を変えた。

そうして、少女の前で膝を付き言ったのである。

「君は奴隷なんかじゃないよ」

魔術師、貴族にはあるまじき行為に、少女は青年を見下ろし息を飲む。

「だって、あたしは売られたんじゃ・・・」

「そう。だから俺がリストから選んで君を買ったんだ」

「貴族に売られるんでしょう?調教されて」

「言ったよね。俺、貴族サマの犬を仕上げられるほど暇でもないって」

「だって、だって、お役には立てるとか何とか言って・・・・・」

「それはすぐに分かるよ」

柔和な表情は崩れずにひたすら自分を見上げてくる。

自らを奴隷候補だと思っていた少女はただただ信じられないと首を振った。


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