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溺れる爪痕
【ファンタジー 官能小説】

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愛撫-10

 下着など着けていない本当の布一枚、晒された局部は空気を直に浴びヒクリと呼吸するように痙攣する。

「うん、いい感じだ」

喋ると同時に吐き出された息にも、少女は悲鳴を上げそうになった。

ここへ連れてこられる前、貴族の従者に身体を思い切り洗われた。

垢を落とすというよりは皮膚を根こそぎ削り落とすような、乱雑で酷いものだった。

そんな中でも声を堪えるなんて容易いことだったはずなのに。

ぞくぞくと背中を這い回るこの感覚はなんなのだろう。

つぅ、と指先が太ももをなぞり無毛の丘を撫でる。

「あっ、や、ぁっ」

「おっと」

バッと閉じられた膝にアズールは身を引き、少女の顔を覗き込む。

恐怖の色こそ見えないものの、その表情には混乱がまざまざと浮かび上がっている。

「そういえば処女だったね。大丈夫、痛いことはしないよ」

「・・・・あ、違・・」

サキュバスという種族は絶世の美貌と、その体液に強力な催淫作用を持つ。

粘膜接触は激しい幻覚と快感をもたらし、歯切れの良い夢から覚めた後の身体には活気が満ちると云われていた。

サキュバスと人間の混血である彼女にも、少なからずその性質があった。

しかし純血のサキュバスと違うのは、混血は副作用がある、という点。

例えるならランクの落ちた安い酒。軽く微弱に酔うことが出来る反面で粘膜の接触を一度でもしてしまえばそこからの剥離は遅い。

軽いながらも延々と続く幻覚に悪酔いし、時にはその夢から醒められなくなる者もいるという。

サキュバス譲りの素質、そして処女であるにも関わらず彼女が買い手に落ちなかったのはそのためである。


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