及ばぬ力U-1
全力の葵の力が空間転送の魔法陣を呼び寄せ、七色に輝く魔法陣は人界を護る守護壁のようにどんどん広がってゆく。
(・・・来るっ!!)
いくつもの小さな衛星が第一波となり魔法陣へと吸い寄せられていく。
それだけでもかなりの衝撃が葵を襲い、顔をしかめた。高温に熱された大きな隕石などもある。それが目前の魔法陣に消えるだけでも肌を焦がすような灼熱の風が王宮に吹き荒れる。
(まだまだ・・・こんなものじゃないっ!!)
眼光鋭く頭上を見据えると・・・今まで以上に巨大な衛星を纏った惑星がいくつも見え始めた。
衛星と呼ばれる星々の大きさも徐々に大きくなり、やっと飲み込んだ惑星の一部でさえ・・・魔法陣を通るのがギリギリだった。
「・・・ぐっ・・・!!」
流れ落ちる汗もそのままに葵は片膝をついてしまった。杖を支えにやっとのことで立ちあがる。
激しく乱れる呼吸に目の前がぐらりと揺れる。
(・・・いけない・・・体が・・・・・っ!!)
かつてない力の消費に葵は意識を手放しそうになっていた。
はっとして頭上を見上げると、巨大な魔法陣は尚も降り注ぐ星々を飲み込み続けている。
安心したのもつかの間、葵は最後の力を振り絞り・・・杖をかかげた。
と、その時――――・・・
一瞬弱った魔法陣から隕石が突き抜ける。
「だめ・・・っ!!」
瞬時に移動した葵の脇腹に焼けるような痛みが走った。その体と王宮で隕石を受け止めた葵の腹部からは鮮血が噴き出る。
脇腹を抑えて片手をつくと、激しい痛みに立ちあがれなくなってしまった。
(しまった・・・骨と臓器をやられた・・・・)
絶望と己を許せない気持ちに葵は涙を滲ませる。
仙水が葵のことを打ち明けると・・・大和は悔しそうに拳を握りしめた。それを横目で見ていた斉条の手元で何がか音を立て、目を向けると・・・。
葵に渡された宝珠の光が弱り、そして大きな亀裂が入っていた。
「・・・まさか・・・・」
まるで宝珠は葵の様子を示すように、斉条の不安をかきたてる。
血を失い崩れ落ちる体を支えることが出来ず、葵は地に伏していた。