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翼の記憶
【ファンタジー 恋愛小説】

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及ばぬ力V-1

『・・・葵、もう良い・・・
王さえ居れば人界は何度でもやり直せる・・・』






薄れゆく意識の中で"世界の意志"の声が聞こえる。






「・・・やり直せるってどういう・・・・・」






『・・・人界が無に帰すのもまた運命・・・そなたはただ見守り、いずれ生まれ来る命を育めば良い・・・』






「そんなこと・・・出来るわけがない・・・・今ある命を見捨てるわけには・・・・・・」






最後の言葉を発する前に葵の口から大量の血が吐き出された。口元を抑え、光を失いつつある杖に手を伸ばす。






『惨劇を見るのが辛ければ己の傷を癒し・・・しばらく眠れ・・・・目覚める頃には全て終わっている・・・』






自分の意志とは関係なく王宮が葵と城を守るため強力な結界を生成していく。徐々にふさがっていく傷に葵は首を振った。






「この体はどうなっても構わない・・・っ!!」






『・・・・・』






「自分の傷は癒せなくていい・・・全ての力を愛する者たちのために・・・・!!!」






ドンッ―――――






銀色の光の柱が葵を包む。
ほぼ0に近かった葵の力が限界の底を貫いて新たな力を得た。






揺るぎのない強い意志を秘めた眼差しとは打って変わって、絶命してもおかしくないほどにその体は傷ついていた。






消えかかった魔法陣から巨大な隕石が地上へ向けて落下していく。






ぐっと力を込めて翼を広げ、召喚した魔法陣へ飛び込んだ。隕石が落下する地点へ先回りした。






ドサッ―――――・・・






魔法陣を通り抜け、葵は地に足を・・・膝をついた。振動で傷口から大量の血液が流れ出る。息がつまるほどの激痛に顔がゆがんだ。






「今の音は?」






孤児院で身を寄せる子供たちの中に、一際輝く三人の青年と一人の子供が窓に近寄る。






「・・・っなんてことだ・・・葵様っ!!」






血相を変えた斉条が孤児院を飛び出した。激しい暴風に体を吹き飛ばされそうになりながらもやっとのことで愛しい王を抱き起した。






濡れた感触に疑問をいだきながらも手元をみて愕然とした。






「なぜ・・・・こんな・・・・・」






葵の脇腹からあふれ出る鮮血に斉条の手が震える。追いかけてきた仙水や大和、蒼牙が必死に葵に呼びかけた。








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