叶わぬ初恋-1
「おっ?いたいた、どこ行ったかと思ったぜ大和―――・・・と、王様っ!!」
大和の親友の長身の彼が手を振って近づいてきた。彼の名は泰史という。幼馴染の彼らは聡明でたくましく、その瞳に力強い光を宿していた。
葵は泰史のほうを振り返り、頭を下げた。
「おはようございます泰史さん。昨日は途中で投げ出すようなことをして申し訳ありませんでした」
すまなそうに眉を下げる葵に向かって泰史は大声で笑った。
「いやいやっ!!王様が謝ることはねぇっすよ!!こうやって顔を見せてくれるだけで凄いことなのによ、って言っても一人だけ落ち込んでたやつがいたけどな?」
にやりと笑った泰史は大和を肘でつついた。真っ赤になった大和は一つ咳払いし、顔を背けた。
「まったく・・・ほら泰史!!いくぞ!!」
笑いを堪えている泰史は・・・
ふと真剣な顔になり葵に向き直った。
「・・・なぁ、王様・・・
俺は大和を応援したいと思ってる。だが、昨日きた美形の兄ちゃんは・・・王様の何なんだ・・・?」
「い、いえ・・・斉条は・・・・」
「そう思ってるのは王様だけじゃないのか?あの兄ちゃんの王様を見る目は・・・」
「・・・斉条が・・・?」
その時、聞きなれた静かな足音が近づいた。
「・・・私が何か?」
「・・・斉条・・・どうしてここに・・・・」
いつまでも後をついてこない2人に足を止めた大和の声がした。
「・・・おい、泰史なにやって・・・・あんた・・・」
「・・・葵様、昨夜の私の言葉は理解していただけなかったようですね。お戯れもほどほどにしていただかなくては・・・」
斉条は言い終わると鋭い目線で大和を睨む。
「葵様は貴方たちに好意がありここに来ているわけではない・・・わかっているな?」
「・・・そんなのわかってるさっ!!心配してきてくれてるんだろ!?」
意気込む泰史を片手で制止し、大和がすすみでた。
「葵様の心内や行動を制限するのもあなたの仕事なのですか?斉条殿・・・」
「俺は葵様に会えて嬉しい、これからもずっと一緒にいたとさえ願っている」
「・・・ふっ、王と肩を並べることほど愚かなものはないな・・・」