THANK YOU!!-5
「んー・・」
「・・?」
急に考え込んだ女子生徒に、瑞稀は何を話していいか分からなくなって首をかしげる。
すると、バッと顔を上げた女子生徒は瑞稀に向き直った。
その顔は、ずっと忘れていたキャラクターの名前をやっと思い出せた大人のような・・。
「もしかして、八神瑞稀さん?」
「・・!う、うん。そうだけど・・」
いきなり名前を当てられた瑞稀は戸惑いの表情を浮かべた。
名乗ってないはずなのに、よく分かったなと心の中で思ったが、言わなかった。
だが、表情に出てたのだろう。女子生徒は更に嬉しそうに言葉を続けた。
「やっぱり。確か、入試の算数、9割合格だったんだよね?」
「・・・よく、知ってるね。」
瑞稀は驚きを通り越して、呆れてしまった。何故こんなに初めて会った人に入試の点数を当てられているのだろうと。それに気づいたのか、女子生徒は、自分も9割合格だった事を伝えてきた。
絽楽学園の一般入試は、2教科。国語と算数のみ。6割以上で合格となる。
そして、その入試の算数で9割を取ったのは瑞稀を含めた3人のみだった。国語はまた別だが。
瑞稀は、やはり叔父に教えてもらっていたことが幸いしてこんな点数を取れてしまった。
自分でも驚いた。喜ぶところも見つからなかったという理由もあるが。
そのために、教頭先生から合格発表の後にわざわざ呼び出されてカンニングをしていないか聞かれたくらいだ。
なんとか身の潔白を証明した瑞稀はやっと入学が決まった。
「いやー・・実はウチも呼び出されて・・。丁度キミのあとだったんだ。そしたら、疲れた顔して出てくるキミとすれ違って。」
「・・・・あ」
「思い出してくれた?」
女子生徒の言葉を聞いた瑞稀は記憶を辿って、やっとその日のことを思い出した。
確かに、証明がやっと出来た瑞稀が帰ろうとして部屋を出て扉を閉めた時、長いポニーテールの女子とすれ違った覚えがあった。
「あの時の・・。」
「そ、すれ違って部屋に入った時に名前聞いたんだよ。それで思い出したってこと。で、合ってるんだよね?」
「うん、そうだよ。八神瑞稀、です」
「ウチは紫波恵梨。ヨロシクね!」
恵梨の、優しい笑顔に瑞稀もやっと笑顔を返した。