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THANK YOU!!
【純愛 恋愛小説】

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THANK YOU!!-10



それから、たっぷりと好きなゲームについて語り合った。
恵梨も瑞稀と同じく、バトルゲームやシュミレーションゲームを好んでいて、それが周りとは違う大人向けのゲームばかりで、話せる人が誰も居なかったこと。
だから、周りに合わせて、あまり自分の好きなゲームについては話したことが無かったらしかった。
そこまで話すと、恵梨は窓枠に体を預けて、ホッとしたような表情になった。

「あー、瑞稀ちゃんもそうだったんだー。良かったー」
「・・何が?」
「ゲームやってる姿見えたから、何やってるのかなって気になって。それで、声かけてみたんだけど・・話しかけて良かった!」
「う、うん・・・」

笑顔で、応えるつもりだった言葉を濁らせた。
どこかで、聞いたことがあるセリフ、シュチュエーション。
瑞稀の脳裏に、懐かしい桜の木が見える教室が浮かんだ。そして、自分が座った隣の席に居た人に話しかけられたこと・・。

「・・!!」

瑞稀は、忘れていた記憶を思い出した。瞬間、担任の先生が入ってきて、急に変わった瑞稀の様子を気にしていた恵梨は渋々自分の席に戻った。
瑞稀は、それに気づかず、担任の話も聞かず・・ただ、ただ、思い出していた。

「(・・そうだ・・。あの、言葉は・・)」


・・・『良かった!話せる人見つけられて!』
・・・『俺もだ。・・話しかけて良かった。』
・・・『話しかけてっていうか、視線で訴えてて・・の間違いじゃない?』

「(・・・っ・・拓斗・・!)」

セリフを思い出すと・・映像のように流れる記憶。
瑞稀が心の中で名前を叫ぶと、一時停止したように茶化されて拗ねている拓斗の顔が鮮明に出てきて、消えなかった。瑞稀は、思わず机に伏せた。

「(・・あぁ・・私たちは・・そうやって出会ったんだもんね・・)」

記憶を呼び起こした瑞稀は、自分と拓斗の出逢いを思い出して涙を一筋流した。
あの頃みたいに、すぐ笑い合える純粋な関係だったら・・よかったのに。
そう思って、余計に悲しくなった。
開け放たれた窓から吹いてくる暖かい風は、瑞稀の後ろ髪を揺らしてうなじを晒した。
しかし、そこに感じるのは冷たさだけで、まだバッサリ切った髪の短さに今だ慣れそうに無かった。



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